第1章 使命と指名
今日みたいに、月が赤い日は"あの日" を思い出す。
私が助けられなかった、"あの人達"を…
だから、私はいつまでも"ココ"から動けないのかもしれない…
ーお主なら……この世界を……ー
そこで目が覚めた。
ふと、畳の匂いが鼻にきた。
どうも、赤い月や満月はひどい眠気に襲われる。
私には、関係ないことだ、と言ってる気がする。
『紫水、起きてる?』
この声は、乱菊だな。
「今、起きたところだけど…」
『あ~、ゴメンね。実は総隊長に、呼んでこい、って言われて来たんだけど…』
「えぇー、ヤダ♪」
『そんな事言わないでよ。私が後から、説教されるのよ』
「逃げれば、大丈夫(グッ)」
『そんなに嬉しそうに、親指たてないでちょうだい』
今日の乱菊は、ノリが悪いなぁ…
「ねぇ?」
『何よ』
「何かあったでしょ?」
『別に…』
「そう」
乱菊が、"別に"って言う時は何かあった時。
話さない限り、私は聞かない。聞いても、話さないから。
『総隊長から、逃げられるのなんて貴女くらいよ』
「そうかなぁ?」
『それで、あそこまで怒らせるのも貴女だけ』
「ありがと」
『褒めてないから…』
こんな乱菊も久しぶりだ。
私が"あの人達"を助けられなくて、荒れていた頃の私と一緒にいる時と似てる。
顔には出さなくても、雰囲気でわかる。
そのくらい、"ココ"に居すぎてしまった。