第4章 .下剋上
5回戦、試合は5分後に迫り、会場は人で埋め尽くされていた。
(座るタイミングを見失った)
後ろの方の席は空いていたが、やはり会場に来たからにはできるだけ近くで観たい。
前の方をみても空いている席が見つからず、仕方なく入口付近の手すりに寄り掛かって観戦することにした。
試合が始まり今の得点差は12点
今までの予選の流れだと誠凛がおしているように聞こえるが、
残念ながら現実はそうではない。
0-12
受け入れ難いが誠凛は未だ得点をしていない。
「おお!すげぇ圧力、なんだあいつ!」
周りからは坊主の10番に対する言葉がちらちらと聞こえてきた。
(確かにあの10番…思ってたよりもやっかいそうだな)
「あいつらはもつんだよ
なぜなら、古武術の動きを取り入れてるからだ。」
TO時に打開策はないかと考えていると、隣からそんな声がした。
(この人詳しいな…)
何となく隣の人達の会話を聞くことにした。
「古武術の1つにナンバ走りっていうのがあるんだが、
普通に走る時、手足は交互に振って走る。でもナンバ走りは同じ側の手足を振って走る。
それによって体をねじらずに走ることができ、ねじらないことによって体にかかる負担や、エネルギーロスを減らせるらしい。」
(へぇ…)
「詳しいんですね」
アタシよりも豊富な知識を持っている見知らぬ男性に、気づいたら話しかけていた。
普段はそんなことしないのだが。
と同時に男性の方を向いたアタシは後悔する事となる。