第5章 すれ違いバースデー
週末金曜日。
就業後、1時間暇を潰しててほしい。
そう梢に言われ、どうしようかと悩みながら駅に向かう。
そういえばアルコールがないと気付き、駅ビルでスパークリングワインを購入。
そのままふらふらしていれば美味しそうなショートケーキを見つけ、購入。
そんなことを繰り返し、手元はたくさんの荷物で埋め尽くされる。
「馬鹿なの、僕。」
きっと梢が準備をしてくれているはず。
それなのに、つい梢が喜ぶ顔が浮かんであれもこれも購入してしまった。
やや重たい荷物を抱え、自宅へ帰る。
約束通りインターフォンを鳴らせば少し間を置いて入り口のドアが開いた。
「お帰り、って荷物すごいね!」
「お腹すいてたから…」
素直に言えず、ついぶっきらぼうに答え荷物を梢に渡す。
はいはいと荷物を受け取って奥へ進む梢を追って部屋へ入ると、小さなガラステーブルには手料理とホールケーキが並んでいた。
「作りすぎちゃったね。」
全部、僕が前においしいと言った料理。
照れ隠しで別に…と返事をしキッチンへ逃げた。
キッチンからワイングラスを持ってくると、その頃には僕の買ってきたものも含め机に乗り切らないほどの料理。
スパークリングワインを開け、グラスに注げば梢はふわりと笑った。
「月島くん、誕生日おめでとう。」