第3章 ep Toru Oikawa
仕事が終わり、エレベーターで階下に降りる。
ちんっと軽快な音が鳴り扉が開くと入り口付近に見つけた。
うちの会社の百合の花。
「潔子ちゃん!おっつかれー!」
小走りで近寄って肩をぽんと叩くと俺の方を振り返る。
「…お疲れ様です。」
ヒールを鳴らし歩く姿は本当に綺麗。
背筋もがしゃんと伸びていて一本の線を歩くように歩く姿はもうたまらないよね。
「今から飲みに行くんだけど潔子ちゃんもどう?」
にこり、笑いながら聞けば潔子ちゃんは目を伏せながらぽつり、つぶやく。
「ごめん、大学の時の友達と今から食事なの…」
「そっか。じゃあまた今度。」
潔子ちゃん、それ、嘘でしょ。
そんな言葉を飲み込み手を振る。
俺、わかっちゃうんだよね。
人の嘘とか。
じゃあいつものところ、いつものメンバーで予約取ろうか。
そう考えていれば目の前を男女二人組が横切る。
ああ、3課の2人か。
梢ちゃんとハーフくん。
仲良く帰る2人を見て思い出す。
あの日。
あの夏の日にメガネくんに初めて呼び出された日のことを。