第1章 "何もかもが"
「女の子…?どこから入ったんだ…?」
どうやら私を見つけたのは、
声からしてジタンさんだったようだ。
目には見えないけど相手の言動から見て
かなり驚いている様子。
そりゃあまあ、家に知らない奴がいたらびっくりするよな。
ってそれどころではない。
どうにかしてこの人に状況を説明しなければ…!!
私は両手を前に出してばたばたと動かしながら
全身全霊をかけてジェスチャーで伝えようとした。
声も出せない、目も見えないじゃ伝える手段がこれしかない。
どうか…伝わってくれ…!!!
「おーい!みんな!ちょっと来てくれ!」
ジタンさんの呼ぶ声。仲間のひとたちを呼んだ声。
ああダメだった。伝わらなかったんだ。
自然と見えない目からじわ…と涙が溢れてくる。
名前以外自分のことがわからないまま、
思い出せないまま捕まって
運が悪かったら
刑務所で一生過ごすことになっちゃうかも知れない。
さらに悪かったら…考えたくない。
見えない目を手でそっと覆うと、小さく縮こまった。
「紹介するよ」
突然私の隣で聞こえた声に、
縮こまって顔を覆っていた手を離し
声のする方へ顔を向けた。
「オレの運命のレディさ!」