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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第10章 香りは導く


 その少年に出会ったのは偶然だった。
新しい島につけば酒場を回り、情報収集をするのが当たり前になっていた。
初めは助けるつもりなんかなかった。
痛い目に合いたくなければ、柄の悪い酒場にこなければいい。
弱ければ倒される、それは新世界を一人で生きてきた沙羅が身を持って学んだ事。
だが、少年の口から出た言葉に気が変わった。
“白ひげ海賊団”
懐かしくて、愛おしい、大切な大切な家族達。
最早、戻ることも関わることも出来ないけれど、新しく家族となったであろう少年を守ってあげたくなった。
極力、接触をさけて傷の手当てをすれば、それで終わらせるつもりだった。
しかし。
『一番隊のトシ』
その懐かしい響きを聞いた時、思わず胸が締め付けられた。
白ひげ海賊団、副船長、そして一番隊隊長、歳三。
白ひげが『歳ぃ』と呼び、皆に『歳じぃ』と慕われた歳三。
今も、瞼の裏に浮かぶ優しく穏やかな笑顔。
自分達を守るために、“責任を持ち”逝ってしまった大切な人。
そして、その意志を継ぐように一番隊隊長となったマルコ。

マルコ率いる“一番隊”に所属する“トシ”と言う名前の男を、
無視することなど到底できなかった。
宴の場所に困っている“トシ”を助けてあげたい。
その思いから自身の情報源の一つでもある酒場を紹介した。
それでも、名前を名乗る事はできず、咄嗟に“ユエ”と名乗った沙羅

 それがもう二度と会えない、会わないと誓った家族、そしてマルコとの再会を果たすきっかけになるとは思ってもいなかった。





 トシの元にやってきたマルコは顔を顰めた。
しかし、トシは嬉しそうに『宴の目処がたちそうなんです!!』
と言うとまたもや、走り去っていった。
「・・・」
またもや置き去りにされた形となったマルコ。
最早、追うまい。
そう心に決め、マルコはぐったりしながらモビーディックに戻った。
暫くすると、満面の笑みを浮かべながらトシが帰ってきた。
無事に宴の手配ができたと喜ぶトシの体はぼろぼろで、呆れながらもマルコは甲板に座らせると手当てをし直す。
その間もトシの口は止まらない。
自分を助けてくれた女がいかに強く、美しかったか、ひたすら語った。
マルコは始めから話は聞いておらず。
サッチは『さては、惚れたな』とにやつき、ジョズは苦笑い。
イゾウはそのお気楽ぶりに呆れ返っていた。
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