• テキストサイズ

海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第9章 会いたい


「・・・っはぁ・・・ァアッッ~」
薄暗い部屋の中、女の艶めかしい声が響く。
その女を見下ろす、マルコの目は驚くほど淡々していて愛情は疎か、欲すら感じられない。
それでも、若く逞しい体は、女の体を容赦なく貫く。
その激しくもしなやかな動きは、“行為”に慣れているはずの女ですら、簡単に達せさせる。
「ッツ!~ハァ・・・あァ~~~ッ!」
堪らず嬌声をあげた女はぐったりと体を横たえた。

「・・・」
マルコは暫し、女の息が整うを待った。
「もう、行くの?」
そんなマルコの気配を察して、女が体を僅かに起こした。
見上げた女の顔に“さらり”と、手入れの行き届いた黒髪が流れ落ち、女の顔にかかる。
瞬間、マルコの目に始めて感情が浮かんだ。
返事の代わりのように、その黒髪を驚くほど優しく顔から横に流すと約束の金を置く。
その表情はまた淡々としたものに戻っていた。


 深夜の歓楽街を一人歩く。
欲を吐き出した体は、心地よいはずなのに全く満たされない。
マルコは小さい溜息をついた。
わかっている。体の欲望を満たした所で、心は満たされないことくらい。
波音が耳に届き、マルコは夜空を見上げた。
美しい十三夜の月が浮かんでいた。
思い出すのはあの日の夜。

沙羅が、いつでも幸せでいられるように、その身を、心を、守りたいと思った夜。

「沙羅・・・」
“今、どこにいるんだよい”

マルコが、沙羅の行方を失ってから6年の月日がたっていた。
上陸した島で似た女を見つけては失望し、波間の影に姿を探し溜息をついた。
手がかり一つ見つからないことへの焦燥、苛立ち、そして。
“生きていれば”ちょうど二十歳になる。
後ろ向きな考えが時々頭をよぎり、心が折れそうになる。
しかし、マルコはどうしても沙羅が死んだとは思えなかった。
そんなことを考えながらモビーディックに戻れば、若いクルー達がマルコの帰船に驚いた。
「え?マルコ隊長?どうしたんすか?」
「あれ、泊まらなかったんすか?」
そんな質問を適当に流して自室に向かおうとするマルコを、『それなら酒でも』と引き止めかけた。
が、そんなクルーを甲板後方からやってきたイゾウが制した。
「よさねぇか、女と寝ようが、一人で寝ようが俺達は自由だ」
するとクルー達は意を決したように、口を開いた。
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp