第6章 5月11日
沙羅が乗船してから約2年の月日が経った。
モビーディック号は鬱蒼と生い茂る森に、人の血肉を好む猛獣がでると言われている無人島に上陸していた。
目的はただ一つ。
先日襲ってきた海賊が持っていた宝の地図にあるお宝を手に入れるためだ。
マルコを先頭に、沙羅、クルーや歳三、3番隊副長のジョズ、しんがりにサッチ。
実はこの冒険、この先白ひげ海賊団の未来を担うであろう若手達の実力試しを兼ねていた。
その為、歳三はお目付役と称して中央に位置していた。
ふと、マルコの足が止まった。
うるさいほど聞こえていた鳥の声が急に止んだ。
“何かいる”
マルコ同様、気配を察知した者は自分の武器に手をかけ、わからない者は怯えたように忙しく視線を動かす。
“・・・”
マルコは拳を構えた。
静まり返る森。
瞬間!
マルコの拳が沙羅の前に繰り出された。
キィッンッッ
地に落ちる尖った石。
間髪入れず、その石が大量に降り注ぎ始めた。
サッチやジョズもそれらを次々に叩き落とすが切りがない。
『チィッッ』
『切りがねぇ』
降り注ぐ石はじわじわとクルー達の体力を奪っていく。
「サッチぃ!!行けるか?!」
石の出所に向かえとマルコが言う。
サッチは、応える代わりに地を蹴り、走りだそうとする。が、タイミングを合わせたように一際大きな石が飛んできて阻まれる。
「ックソ!!」
マルコも打って出たいが、沙羅に向けて集中する石に離れるわけにも行かず。
無論沙羅とて、剣を抜き、落とし続けているが、集中する攻撃に追いつかない。
一つ一つは大したことはないが、当たればやはりダメージにはなる。
“盾が欲しい”
皆がそう思った時だった。
「マルコ!」
沙羅の声に、マルコは頷いた。
剣を大地に刺し無防備になる沙羅を庇うように、マルコは前に立った。
「水よ、我が身を守る盾となれ」
その小さな声はマルコにしか聞こえない。だが、その力は大きく広がり、降り注ぐ石を止めた。
「「止まった・・・」」
一部のクルーの気が緩む。
【ニク、クイタイ】
【ヤワラカイニク】
【クワセロ】
次々に不気味な声がした直後。
「あっ・・・?!」
上空から黒い影が沙羅を襲った。