第5章 海が泣いている
お互いを守り合い、支え合う家族がいた。
「・・・っ」
沙羅の瞳から涙が溢れる。
家族のために強くなりたいと思うこと。
そう思う自分のために強くなりたいと思う家族がいること。
家族を守りたいと思うこと。
そう思う自分を、守りたいと思う家族がいること。
そんな人間が両親以外にいることを沙羅は初めて知った。
「沙羅・・・」
「・・・ッルコ!」
流れ落ちる涙を、手の平で優しく受け止めてくれるマルコの胸に沙羅は抱きついた。
西の彼方の海から聞こえ続ける苦しみに満ちた声。
痛い。
苦しい。
助けて。
死にたくない。
幼い頃から、ずっと一人で海の声を聞いていた。
聞きたい時も
聞きたくない時も。
でもこれからは一人ではないのだ。
そう思うと、この苦しみに満ちた声にも耐えられた。
『沙羅、おめぇは一人じゃねぇ』
耳元で囁くマルコの言葉を確認するように、沙羅は二度頷いた。
“おめぇは一人じゃねぇ”
その言葉は、近い未来、白ひげ海賊団を離れ、一人で生きることになる沙羅を再び救うことになるのだった。
それから、数日後、ウエストブルーにある島、オハラが消滅したらしいと彼等は知ることになる。