
第23章 二つ島~危機~

その情報源が裏切り者であり、黒い髭海賊団の一人だったに違いない。
それを肯定するように、イゾウは艶然とした笑みを浮かべた。
「ちょいと、痛い目を見てもらっただけだ、死んじゃいねぇよ」
「・・・」
フォッサは小さく溜息をついた。
せめて、殺してはいない、と聞きたかった。
イゾウの死んではいない、というのは、酷く残酷な意味を持つと知っていた。
死んではいない、つまりは殺すつもりだったが、死ななかったとイゾウは言ったのだ。
今頃裏切り者は地獄の門を叩いているかもしれない。
「で?黒い髭海賊団はどこにいやがる?」
白ひげの静かな声がずしりと、部屋を重くした。
先程といい、気のせいではない。
白ひげは怒っている。
フォッサを含め、ほとんどの者の背を冷たい物が走った。
「ここだよい」
そんな中でも、いつも通りに淡々した様子でマルコが地図を示した。
モビーディック号が接岸する港の先端の先に黒い点がある。
「バトルシップで10分程だよい」
「でぇ?どうする?」
白ひげから滲み出る怒気に、隊長達に緊張が走る。
答えを間違えば、マルコと言えどもただではすまないだろう。
「俺に、落とし前をつけさせてくれよい」
「・・・」
白ひげが無言で先を促す。
「今回の件は俺の油断が招いたことだ、二度はねぇ」
そう言ったマルコの瞳に非情の光が宿る。
「この海に知らしめてやるよい、俺達の仲間に手を出せばどうなるか」
瞬間、白ひげの口元が満足そうに孤を描いた。
「グラララ~言うじゃねぇか・・・」
隊長達がほっとしたのも束の間。
「勘違いすんじゃねぇぞ、おらぁお前ぇらが、飲んでいたのを責めてるんじゃねぇ」
じっ・・・とマルコを見据えた。
「酒は飲みてぇ時に、飲みてぇ奴と飲むのが一番だ」
ジョズを見た。
「飯も一緒だぁ、なぁ?サッチ」
サッチは頷いた。
「おれ達は海賊だ、自由にしたらいい」
ビスタに暫し、視線を置く。
「だが何でも勝手にしていいわけじゃねぇ、それを忘れるな」
その言葉は隊長達の真ん中に置かれた。
一人一人が、それぞれの形でその意味を体現していけるように。
言葉の受け取り方もまた、自由。
「おれに取っては、お前ぇ達は全員可愛い息子だ、誰かが特別なわけじゃねぇ」
白ひげと視線のあったブラメンコは、こくりと頷いた。
「だが、沙羅は、娘は別だぁ」
ラクヨウは応じるように笑い返した。
