第3章 偉大なる双璧
その翌日、マルコは白ひげの元を訪れた。
「おやじ、強くなりてぇ」
開口一番、マルコは白ひげの目をしっかりと見据えて言った。
白ひげは、思わず目を細めた。
「グラララ~どいつもこいつも生き急ぎやがる、なぁ歳ぃ」
話を振られた歳三は白ひげに肯定の笑みを返し、言った。
「マルコ、何を焦ってるんだ」
「あの時、オヤジの覇気と歳じぃがいなきゃ俺達は死んで・・・」
マルコは、そこで言葉を詰まらせた。
急かすわけでもなく、先を促すわけでもなく、二人は静かにマルコが口を開くのを待った。
「沙羅は、連れて行かれてた」
あの日感じた絶望を思い出すように、マルコの手が無意識に握り締められる。
「俺は弱い、この世界、この新世界で家族を、沙羅を守るために強くなりてぇ」
“いい目をするようになった”
「そうか・・・」
初めてあった時は、尖ったガラスのような目をしていた。
回りを威嚇し、近づく者を傷つけ、欲する“モノ”も、失なう“モノ”もないと全身が語っていた。
だが、そんな息子にもどうやら、欲しい“モノ”が見つかったらしい。
『グララララ~』白ひげは嬉しそうに笑った後、ニヤリと海賊らしい笑みを浮かべた。
「歳ぃ、おめぇ弟子が欲しいって言ってたなぁ」
「あぁ、言った言った」
白ひげに応えるようにニヤリと笑えば、マルコを見た。
「!!オ、オヤジ、歳じぃ」
「グララララ~、強くなりてぇなら、歳を超えてみろぉ」
「ハハハ、そうじゃそうじゃ、儂を超えてゆけ」
楽しそうに笑う様は宴のようだ。
マルコの覚悟を試すこともなく
まだ早いと諭すこともなく、
ただ、受け止めてくれる。
“大きいよい”
マルコは並び立つ、偉大なオヤジと歳三に心の底から心酔し、尊敬の意を込めて深く頭を下げた。