第15章 ハレム島に巣くう闇
“絶対ぇねぇな”
そこでマルコの妄想は止まった。
沙羅の体に自分以外の男が触れるなんて許せない。
ましてや羞恥に震えた沙羅の口から他の男の名前が出るなんてありえない。
マルコはまた、イゾウを睨んだ。
するとイゾウは急にフッと笑い、微かに唇を動かした。
『“お互い”ありえねぇな』
『あたりめぇだ』
マルコが妄想したように、イゾウもそうだったのだろう。
本気で惚れた女を他の男と共有するなど、やはりありえない。
髪の毛一本、爪の先まで自分色に染めて愛したい。
甘く可愛らしい声が紡ぐのは自分の名と啼き声だけでいい。
瑠璃色の瞳に映るのも自分だけ。
その身も心も、全てを自分だけのものにして溺れさせたい。
“沙羅を自分だけのものにしたい”
その後眠れぬ一夜を過ごした二人と沙羅はモビーディックに帰船した。
目の下に葛藤の後を見つけたサッチとハルタが、すかさず爆笑しながら絡み、寝不足で機嫌の悪い二人にぼこぼこにされたのは想像に難くない。