第6章 Firefly
【潤side】
収録が終わっても、3人はなかなか楽屋に戻ってこなくて。
俺は相葉くんと二人、重苦しい沈黙の中にいた。
相葉くんは、何か言いたげにチラチラと頻りに俺の様子をうかがっていたけど、一向に話を始める気配はなくて。
俺は痺れを切らして、立ち上がる。
別に、何にも聞かないならそれでもいいけどね。
「……待って!」
ドアに手を掛けた瞬間、背中に泣きそうな叫び声が聞こえた。
「…何?」
振り向いて睨みつけると、ひるんだように息を呑んだけど。
ぎゅっと拳を握りしめて、意を決したように顔を上げる。
「翔ちゃんを、俺に返して」
「…はあ?」
まさかそんなこと言われると思ってなくて、変な声が出てしまった。
「なんだ?それ。翔くんは相葉くんのもんじゃねーだろ」
「俺のだよ!翔ちゃんがそう言ったもん!俺には、雅紀だけだって!」
ムカッとした。
なんにも知らねーくせに、何言ってんだこいつ。
「俺も、翔くん抱いたけど?」
そう言ってやると、泣きそうに顔を歪めて。
白くなるほどに唇を噛みしめて、でもその瞳に強い意志を宿しながら睨んできた。
「もう、松潤とはなにもないって、そう言ってくれた。だから、もう二度と二人で会わないで。月曜日だって、これからは俺と一緒にいてくれるって約束したからっ!」
その言葉に、一瞬で頭に血が上った。
「…俺が、翔くんを抱いたのは、この間の金曜日が初めてだよ」
自分でも驚くほど、低い声が出た。
相葉くんの目が、驚愕に見開かれる。
そうかよ。
そんなに、リーダーのことが大事なのかよ。
俺のこと利用して、そうまでしてリーダーとのこと、相葉くんに隠し通すつもりなのかよ。
「月曜日、翔さんが誰といるか、知らないの?」
俺、嬉しかった。
あんな風に抱いてしまった俺のこと、ちゃんと受け入れてくれて。
だから、もう忘れようって。
あの夜のこと、いい思い出として心に大切にしまって、これからはメンバーとして、あんたのこと支えていこうって、そう思ってた。
だけど、あんたはそんな俺の恋心を利用したんだ。
リーダーを、守るために。
……許さない。
あんたのことも、リーダーのことも。
滅茶苦茶にしてやるよ。
もう二度と、二人でコソコソ会ったりできないように。
俺の手で、全てを終わらせてやる。