第5章 TRAP
【智side】
「…なに、それ…」
いつものようにベッドに押し倒されて。
彼のバスローブを脱がせて。
目の前に現れたその無数の紅い痕に、絶句した。
青のネクタイを締めたテレビの中の翔くんは、すごく疲れた顔をしていて。
今はそんなにキツい仕事入ってない筈なのになんだろうって思ったとき、昨日の楽屋の様子が思い出されたんだ。
重く沈んだ、空気。
不機嫌そうな顔の松潤と、俯いたままの翔くんと。
相葉ちゃんの、泣き腫らした瞳。
「…誰、が…?」
普通に考えたら相葉ちゃんだけど。
彼がそんなことするとは思えなかった。
「…松潤…」
予想もしてなかった名前に、聞き間違いじゃないかと耳を疑った。
「なんで…!?」
俺に覆い被さった状態から起き上がって、彼は苦しそうに俯いた。
俺も上半身を起こして、その腕を掴む。
「ねぇ、翔くん!なにがあったんだよ!?」
叫ぶと、腕を掴んでいた手を取ってぎゅっと握り、俯いたまま金曜からの出来事をぽつりぽつりと話始めた。
その手は、ひどく震えていて…。
俺は声も出せないまま、その手を握り返すしかできなくて。
「……俺の、せい、だね……」
話が終わってそう言うと、彼は弾かれたように顔を上げた。
その頬には、幾筋もの涙の跡。
「違う!智くんのせいじゃない!」
「…俺のせいだ」
「違う!俺が、雅紀に、智くんのこと…ちゃんと言えなかったから…」
俺の、せいだよ。
俺が松潤に後をつけられたから。
俺が、あの時、手を離せなかったから………。
じっと俺を見つめるその綺麗な瞳から、幾粒も幾粒も涙が零れ落ちる。
手を伸ばして、それを拭ってやると、苦しそうに表情が、歪む。
俺の我が儘で、こんなに君を傷つけた。
苦しい思いを、させてる。
やっぱり、あの時手を離すべきだったんだ。
俺が、間違ってた。
君を、離したくなかった。
地獄まで、君を連れていきたかった。
愛してくれないのなら、一緒に苦しんで欲しかった。
だけど、君だけを傷付けるつもりなんて、なかったんだ。
傷付けられたのが、俺なら良かったのに。
俺なら、どれだけ傷付けても構わないのに。
なんで、君が………。
俺は、そっと手を伸ばして、震える君の身体を抱きしめる。
「…ごめんね……翔くん……ごめん……!」
君は、声を殺して泣いていた。