第5章 TRAP
【和也side】
この日俺は、レギュラー番組の、Newゲームを考える会議で、都内のスタジオに来た。
控え室に入っていくと、一瞬でそれと分かるくらい、その場の空気が凍りついていた。
新聞を広げる翔ちゃん、
パソコンの画面を見る松潤、
そして、机に突っ伏して寝る相葉さん、
それはいつもの光景なのに、
いつもとは全く違っていた。
俺は、3人に挨拶するのも忘れて、入り口に立ち尽くしていた。
そこへ大野さんがやって来た。
「おはよー...って、何?」
彼も空気に気付いたみたいだ。
俺の隣に並ぶと、『どうしたの?』という目で俺を見た。『さあ〜』というジェスチャーで首を竦めて見せたけど、
それにしても、いったい何が起こったんだ?
軽口を叩いてもいい雰囲気でもないので、俺と大野さんは目配せしあって、奥のパイプ椅子に腰かけた。
「嵐の皆さ~ん、準備ができましたのでお願いしま~す」
番組ADが呼びに来たので、みんなそれぞれに立ち上がった。その時....
「何その顔??」
顔を上げた相葉さんを見て、俺は絶句した。
「何だよ...その目...」
腫れぼったい両目蓋は赤く、さっきまで泣いてましたっていうのが、誰が見ても明らかなその顔...
「え~...あ、夕べ遅くまで本読んでたから...」
......何言ってんの??あんた、本って、ジャンプぐらいなもんでしょ?
俺は相葉さんの手を引いて洗面所に向かった。
急いでタオルを絞って目を冷やすように言った。
「...全く、何があったのよ?...翔ちゃん?」
すると、彼は、また俯いて、わあああぁ...と泣き出した。俺はどうすることも出来なくて、泣く相葉さんの肩を抱き寄せると、彼は俺にしがみ付いて号泣した。
......いったい、二人の間に何があったんだよ?相葉さんがこんなになってるってことは、少なからずも、俺と大野さんも無関係ではない...のかな?
翔ちゃんと付き合うようになって、あんなに楽しそうだったのに...
幸せオーラ、振りまいていたのに...
理由を知りたいって、そう思うけど、
それを知るのが、怖かった。
だって、いつも思ってた。
俺と大野さんの関係なんて、細い綱の上を歩いてるようなもんだって...
風が吹いたら...それで終わるんだって...