第5章 TRAP
【翔side】
智くんに全部話した。
『俺のせいだ』って、君は、自分を責めた。
そんなことないのに...
ニノときちんと向き合って、
ちゃんと話してから始めた君と、
相葉くんに隠したまま、美味しいとこだけ貰おうとした俺と、結果は分かってた。
自分のところに来る人間に、いつも誠実に向き合った智くん、それが正解だよね。
俺は、いつもズルい。
『傷つけたくない』何て言いながら、
本とは、傷付くのが怖くて、逃げていた。
その代償....
自分のエゴだけを最優先した俺の、
俺だけの、罰....
そんな俺が、智くんと一緒にいては、
君の側にいて、いい筈なんかない...
俺を優しく抱き締めてくれている君に、
俺から....
しっかり伝えなければ、
終わらせなければ...
俺は、智くんの肩越しに言った。
「....智くん、もう俺たち終わりにしよう...」
「.......」
智くんは、俺の背中に回していた手を静かにほどいて、俺の顔をじっと見た。
涙が、頬を伝う。
君は、細くて綺麗な指で、俺の涙を優しく拭ってくれた。俺の大好きなその指で....
「ごめんね...翔くん...君から離れたくなくて、月曜日に、ここに来るのを止められなかった俺の我が儘のせいで、こんなことになって...」
「そんなこと..」
「終わりにする....もう、翔くんの全部を相葉くんに渡すよ...」
「智くん......」
泣きそうだった目を、真っ直ぐに俺に向けて、
「でも、最後にもう1回だけ我が儘。聞いて?」
と、そう言った。
黙ったままの俺に、
「今夜は、俺、抱かれるつもりで君の帰りを待ってた。だから、俺を抱いて?
それで来週、もう1回だけ...最後に君を...
翔くんのことを抱かせて欲しい。」
「.......智くん...」
「俺の責任で付いたこの痕、俺に、上書きさせて欲しいんだ....」
そう言うと、君は俺をベッドに沈め、胸に唇を落とした。
狂ったまま動き続けていた歯車が、
壊れるときが来たんだ。
もっと早く、終わりにしなきゃいけなかった。
でも、月曜日、君が家で待っててくれるっていう、その幸せを、手放すことが出来なかった。
『好きだ』
そのひとことが、言えなかった俺の、
10年以上の恋は、終わる。