第5章 TRAP
【雅紀side】
ずっと、胸の中で燻っていた。
ひとつの疑惑。
翔ちゃんには、俺じゃない誰かがいるんじゃないかって。
ボトルのこと。
月曜日のこと。
俺といても、時々俺じゃない誰かを見てるような気がして…。
そんなことないって、
気のせいだって何度も自分に言い聞かせた。
だって、俺といるときに楽しそうに笑う顔は、嘘じゃないって思えたから…。
彼の震える唇から、松潤の名前が零れたとき、嘘だろって思ったけど。
どこかで、ああやっぱりって、そう思った。
だって、知ってた。
あいつが、ずっと翔ちゃんのこと好きだったこと。
だけどバレないようにってすごく気を遣って、わざと翔ちゃんから距離を取ってたから、翔ちゃんは気付いてないって思ってたのに。
なんで?
いつから?
ずっと、二人で俺のこと騙してたの!?
悔しくて、悲しくて、やりきれなくて。
大声を上げて、泣いた。
翔ちゃんは、なにも言わずにそんな俺をただ見ているだけで…。
「…いつ、から?…ずっと、俺のこと、騙してたの…?」
散々泣いて、漸くそれだけを聞くと、彼は大声でそれを否定した。
「違う!」
「嘘…前から、でしょ?前から、二人で会ってたんでしょ?」
「違うって!松潤とは昨日だけで、もう二度とないから!」
「嘘ばっかり!毎週月曜日、松潤と会ってたんでしょ!?」
俺の叫びに、彼は大きく目を見開いて、息を呑んだ。
「わかんないと思った!?月曜だけは、絶対会ってくれないこと、俺が気づいてないと思ったの!?バカにすんなよ!ずっと二人で俺のこと、笑ってたんだろっ!」
「違うって!雅紀っ…!」
突然、ぎゅって強く抱きしめられた。
「…っ…離せよっ!」
「嫌だ!」
離れようと暴れたけど、ものすごい力で抑え込まれて、離してくれなくて…。
「…やだよ…」
また、涙が零れる。
「……俺、翔ちゃんと別れたくない……」
その背中に腕を回して、抱きついた。
「別れないよ。俺には、雅紀だけだから」
翔ちゃんが、優しい声で囁く。
「…だったら、松潤とはもう会わないで」
「雅紀…」
「俺以外の誰とも、二人っきりで会わないで。月曜日も、俺といて。ずっと、俺の側にだけいてよ…!」
翔ちゃんは、なにも答えなくて。
俺は、また声を上げて、泣いた。