第5章 TRAP
【翔side】
胸にある痕を雅紀に見られたくなくて、
出来ることなら、今日はシないで、そのまま寝ちゃうくらいがよかったんだけど。
ヤル気満々で来てる雅紀に、
ダメだとも言えず...
こんな時、女の子なら、
『今日はアノ日なの〜』なんて誤魔化せたものを...待てよ?じゃ、女の子のそれって、怪しいときもあるってことじゃん///
そんなこと思いながら風呂に入り、
終始見られないように気を付けながら、雅紀を抱いたけど。
いくら鈍い彼でも、流石におかしいって思ったよな...そして、今。
真っ青な顔して、
『誰と寝たの?』って...
.....どうしよう...話すべきか?
でも、話さないなら、何て言えば?
雅紀の顔を見ていられなくて、目を反らせた俺の肩を、ぎゅっと掴んで、引き寄せた。
顔を覗き込みながら、それでも尚、目を反らすと、指先で、そっと胸の痕をなぞった。
「....雅紀...」
「翔ちゃん....言ってよ...誰にヤられたの?」
「......」
雅紀は目にいっぱいの涙を溜めて、俺のこと悲しそうに見た。
......そんな顔、させたくなかったのに..
....そんな顔を見たくなかったから....
「翔ちゃん!!ねえ!言ってよ!!」
「....松...潤...」
「松潤?...松潤って...」
「.....ごめん....雅紀....」
「...松潤って...そんなこと...そんなのって..」
「...雅紀....」
雅紀は、思いもしないヤツの名前が出たからなのか、涙も引っ込んだようで、考えるように一点を見つめてた。
そして、急に弾かれたように顔を上げ、詰め寄った。
「何で松潤と?...松潤のこと、好きなの?」
「そうじゃない!!」
「じゃあ、どうして?何で松潤と寝たの?」
理由を話せば、智くんのことも言わなきゃいけない。
それだけは避けなきゃ///
でも...どうやって..
「ごめん...夕べ..ふたりで会ったとき....」
「夕べ?友達と飲んだんじゃなかったの?友達って松潤のことだったの?」
「ごめん....雅紀....」
謝罪の言葉しか吐かない俺に、
雅紀は、『酷いよ....』と何度も繰り返しながら、泣き崩れた。
俺は、その背中を、ただ見つめているしか出来なかった。