第5章 TRAP
【雅紀side】
お互い忙しくて、二人っきりで会うのは一週間ぶりだった。
だから、夕飯なんにしよっかなって考えたとき、一緒にわちゃわちゃしながら作れるもんがいいなって。
だから、お好み焼きにしたんだ。
俺が切って、翔ちゃんが混ぜて。
ひっくり返す時に翔ちゃんに任せたら、ぐちゃってなっちゃって。
二人で笑い転げながら、それを半分こして食べた。
翔ちゃんが、笑って。
俺も笑って。
ほんと、幸せ。
ずーっとこんな日が続いたらいいのにな。
後片付けも二人でして。
「お風呂、先に入る?」
そう聞いたとき、翔ちゃんの笑顔が消えた。
えっ……?
「あ、そ、そっか…泊まってく、よな…」
普段の彼からは考えられないくらい、目が泳いでて。
「え?なんか、都合悪かった?」
「いや…うん、大、丈夫……。あ、お、俺、先に入ってくる」
まるで逃げるように浴室に消えてしまって、ずいぶん長いことシャワーから出てこなかった。
入れ替わるようにシャワーを浴びてリビングに戻ると、もう姿はなくて。
寝室を覗くと、灯りを落としたその部屋の、ベッドの端に腰掛けてた。
「翔ちゃん…?」
恐る恐る声を掛けると、にっこり笑って腕を広げて。
「おいで」って優しい声で呼んでくれて。
俺は笑顔でそこに飛び込む。
さっきの強張った顔が気にはなったけど、いつもにもまして丁寧に翔ちゃんが与えてくれる快楽で、あっという間にそんなこと頭の中から追いやられちゃって。
「俺にも、やらせて…?」
俺ばっか気持ちよくしてもらってるから、彼にも気持ちよくなってもらいたいってそう思ったのに。
「今日は俺はいいから…」
そう言って、バスローブをなかなか脱いでくれなかった。
挿れるときも後ろからで。
「翔ちゃん、やだ…顔、見たいよ…」
だけど、結局、最後まで後ろから貫かれた。
熱を解き放って、少し冷静になると、やっぱり今日の彼がいつもと違うことが気になり出して。
俺に背を向けて、後処理をしている彼の腕をグイッと引っ張った。
「…っ、雅紀っ…!?」
途端に目に飛び込んできたのは、彼の胸に華が散ったみたいに無数に散らばる紅い痕。
「……なに、それ……?」
声が、震えた。
だって、それが表すのなんて、ひとつしかない。
「翔ちゃん、誰、と……寝た、の………?」