第5章 TRAP
【翔side】
潤に抱かれた。
始めは、潤の気持ちが見えなくて、彼からは憎しみしか伝わってこないような気がして...
どうして、こんなにまでして、俺を抱くのか分からなかった。
でも.....
肌を合わせているうちに、俺は思い出していた。
まだJr.だった頃、俺の後ろばっかり付いてきてた潤。小さくて人形みたいに可愛くて。
『翔くん、翔くん』って、声変わり前の、女の子みたいな声で、俺の名を呼んでいたあの頃のお前。
『翔くん、大好き』って、真っすぐにそう言ってくれていたよね...
それが、同じグループになって、お互いに大人になって、気が付いたら、メンバーの中では、一番遠い存在になりつつあった。
潤の方から、遠くへ行ってしまったようで、本当は俺、淋しかったんだ...
その潤が泣いていた。
俺の上で...
どうして泣いてるんだよ...
もしかして...潤...お前....
彼に揺さぶられながら、俺はぎゅっと目を閉じた。
それに気付いてしまわないように。
ただ、俺の中で果て、震えるお前のこと、
気が付いたら抱き締めていた...
お互いに、憎しみだけで身体を繋げるなんてできないこと、最初から分かってたんだ。
ただ、その方が、楽なこともある...
気付かない方が、幸せだってこともあるんだ...
潤の背中を何度も撫でた。
お前が、大切に抱いてくれたことへの、
俺ができる、せめてもの、感謝の気持ちだった。
翌日。
雅紀が家にきた。
「翔ちゃん、今日はさ、お好み焼きやろうよ!」
そう張り切って荷物をたくさん抱えて登場した雅紀。
彼の明るさが、俺には救いだった。
「じゃあ、翔ちゃんは生地を混ぜてよ~俺キャベツ切るから...あと、お皿も並べてね🎵」
「なんか、俺、簡単なことばっかじゃね?」
「翔ちゃん難しいことも出来るの~?」
「.....箸も並べま~す♪」
夕べ、潤が来たことは、雅紀は知らない。
話すつもりはない。
この先も...だ。
潤とは、夕べだけで終わった...
俺はそう思っていた。
智くんとのことを秘密にしてくれるその代償として、俺を抱いた。でも、それで終わるんだと。
潤には悪いけど、忘れてしまおうと...
そう思っていたんだ...でも...
雅紀が.....