第4章 Sugar and Salt
【智side】
なんでよりによって今日なんだ。
やっと終わったと思って時間を確認したら、もう11時を過ぎてて。
でも、今日はマネージャーが先に帰ってくれて助かった。
タクシー拾って直接翔くんちに行けば、エンディングまでには十分間に合うはずだ。
そう、思ってたのに。
松潤が送ってくれるって。
いつもだったら、ありがたいって思うけど。
今日ばっかりは舌打ちしそうになった。
でも、いらないなんて言えないし…。
渋々頷いて、でも松潤が帰る準備をする間もイライラして、つい何度もスマホの時計を確認してしまう。
まずい…家に帰ってたんじゃ、絶対間に合わない。
だから、タクシーを拾いやすいように、大通りで止めてもらった。
「前まで送るよ。こんなとこじゃ…」
万が一見つかってパニックになったらって気を遣ってくれてんのはありがたいけど、それどころじゃないんだってば!
無理矢理、車を降りて、タクシーを探した。
だから、気が付かなかった。
松潤が、少し離れたところから様子を伺っていたことに。
タクシーを止めて乗り込んだ。
スマホでテレビ見れないかなって視線を落としてたから、松潤の車を追い越したことにも気付かなかった。
でも、結局やり方わかんなくて…。
こんなことなら、ニノか翔くんに聞いときゃよかった。
時計は、もう11:50。
やばい…ギリギリ、間に合うか…?
もし、間に合わなかったら、どうしよう?
翔くんのネクタイの色がわかんなかったら…。
俺、どうしたらいいの…?
翔くんのマンションについて、お金を払うのももどかしい。
一万円札を出して、「おつりはいいんで」って言い捨てて、タクシーを飛び降りた。
鍵を出すときに手間取って、エレベーターがなかなか降りてこなくて。
ようやく部屋に入って、真っ先にテレビをつけた、けど。
一瞬だけテロップが見えて、すぐにCMに切り替わってしまった。
俺は、力が抜けて、その場にへたりこんでしまう。
どうしよう……
どうしたらいいの……
わかんない。
今日はどっち?
俺が抱かれんの?抱くの?
確認できなかったときは、どうしたらいいの?
俺は、どうすれば………
パニックになってて、そこから動くことも出来なくて。
「智くん?なにやってんの?」
声を掛けられるまで、彼が帰ってきたことにも気付かなかった。