第3章 Kagero
【和也side】
あんまり潔く大野さんが服を脱ぎ捨てるから、
俺はもう、ドキドキしてしまって。
『抱きたい』って宣言したのに、
もう、何というか彼に翻弄されっぱなしで...
ここは一回、仕切り直して...というか、
俺だって、男なんだってとこ、ちゃんと見せたくて、
思い切って『智』と呼んで見た。
すると大野さんはちょっと嬉しそうに、ふんわり笑って、俺の方へ腕を伸ばした。
その顔が、俺の躊躇いを突き破ってくれた。
さっき恥ずかしい程に震えていた唇も、
今はもう、欲望のままに彼のそれを貪り、その咥内を蹂躙する。
激しいキスを落としながら、彼の背中を撫でると、
大野さんの息遣いが、一気に艶を持った。
唇から首筋に、舌先を這わせ、唇を押し当てていく。
指先は、肩から少しずつ下に滑らせ、
可愛い胸の先を掠めて、摘まんだ。
唇をきゅっと噛んで、声を出すのを我慢しているような大野さんに、俺の嗜虐心が湧き上がる。
どうしても、俺の与える刺激で鳴かせたい。
俺はこの時、知らず知らずのうちに、
この人の向こう側に居る櫻井翔に勝負を挑んでいたのかもしれない...
小さな粒の周りを尖らせた舌先でぐるりと舐め回し、硬くなりつつあるそれを、吸い上げてから軽く噛んだ。
「んああぁ///」
その瞬間、背中を仰け反らせ、大野さんが高い声で鳴いた。
「...智..これ..イイの?..」
ゲームを始めて攻略した子どもみたいに、
俺は嬉しくて、弾む声で組み敷いた愛しい人に尋ねた。
すると大野さんは、目を細めてふわっと笑い、
「..うん..イイ..もっと、シテ...」
と、俺の頭を抱き寄せた。
.........あああ、俺、今から、大野さんを抱くんだ。諦めようって、ずっと目を反らせていた、一番欲しかったもの...
手が届くはずないって、
俺のものになる筈ないって、
そう言い聞かせて目を反らせてきた本当の想いが...今、この手の中にあるんだ。
.....誰にも渡したくない///
俺だけのものにして、どこへもやりたくない..
翔さんなんかに、負けたくない...
俺の想いの全部で、彼を包んでしまいたい。
部屋に響く甘い声は、次第に遠慮がなくなって、
思い切って手を伸ばしたその先に、
触れたことのない、彼がそこにいた。