第3章 Kagero
【智side】
手を引かれて、ベットルームに連れていかれた。
俺をベットの端に腰掛けさせると、慌ただしくなにかを探し出した。
「えっと、確かこの辺に…」
なんて呟きながら、クローゼットの中を引っ掻き回して。
立ち上がったときに手に持っていたのは、ローションのボトルだった。
「…用意してくれてたの?」
「あ、うん、一応、念のためっていうか…」
恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて、俯きがちに隣に腰掛ける。
「ありがと。俺、すっかり忘れてたわ」
手を伸ばして、赤くなった頬を撫でた。
びくりと震える。
ふふふ…かわいい。
「あ、あの、さ…その…大野さんは、その…いつも、どっち、なの?」
「?」
「その…翔さんと、するとき…」
消え入りそうな声で、聞いてきて。
俺は両手でニノの赤い頬を包み込むと、顔を上げさせて正面から目を合わせた。
不安そうに揺れる、瞳。
俺は、宥めるようにそっと唇を重ねた。
「…ニノは、どうしたい?ニノのいい方で、いいよ?」
至近距離で見つめながら、問いかける。
「俺、は……」
一瞬、戸惑うように視線を外して。
「……大野さんを、抱きたい……」
今度はしっかりと目を合わせて、強い意思を感じさせる光を宿しながら言った。
「うん、いいよ。ニノの好きにして…」
「…大野さん…」
「俺を…抱いてよ…」
はっきり言葉に出すと、ニノが息を飲む。
「…いいの?ほんと、に…?」
俺は頷いて立ち上がると、着ていたTシャツを脱いだ。
それからジーンズのベルトを外して、足から抜いて。
下着も、一気に脱ぎ捨てて。
素っ裸になった俺を茫然と見つめていたニノの喉が、ゴクリと音を立てる。
「…大野、さん……いや、智……」
初めて、そう呼ばれて。
思わず笑みが零れた。
「…抱いて…」
腕を伸ばすと、ぐいっと力任せに引っ張られて。
ベットに沈められて。
ニノが上にのし掛かってくる。
その瞳に、欲情の焔が揺らめいて。
見たことのない、雄の顔に変わる。
その鮮やかな変化に、目を奪われた。
「ニノ…俺に、ちょうだいよ…」
言葉は、彼の唇に吸い込まれて。
さっきまで、俺の顔色ばっかり見てオドオドしていたのに。
彼は俺を捕って喰おうとしている野獣のように、俺の唇を貪った。