第3章 Kagero
【潤side】
最近、楽屋の雰囲気が変わった。
原因はひとつ。
翔さんと相葉くんが付き合い始めたからだ。
本人たちは隠しているつもりだろうけど。
バレバレだっつーの。
特に、相葉くん。
なんか不自然に距離を取って座ってるけど、チラチラずっと翔さんの様子を伺ってるし。
翔さんが話しかけたら、それこそ犬がご主人様に尻尾振るみたいに、嬉しそうに駆け寄っていくし。
あれでバレてないと思ってんのかな…?
見てるこっちが、恥ずかしいわ。
あんなに全身で好き好きオーラ出されたら、流石の俺も割って入る気にもならねぇ。
あ〜あ。
翔さんは、俺が欲しかったのになぁ〜。
絶対に相葉くんのものにはならないと思ったのに。
だって、翔さんはたぶんさ…。
「じゃあ、大野さん、二宮さん、松本さん、スタンバイお願いします」
スタッフさんに呼ばれて、俺は楽屋を出た。
リーダーとニノは相変わらず仲良さそうに話ながら、撮影スタジオに向かってる。
この二人も、怪しいんだよな…。
撮影は順調に進んで、俺の分は早々に撮り終わって。ひとりで先に楽屋に戻ることにした。
ドアノブに手を掛けたとき、中から言い争うような声がして、思わず手を止める。
「なんで、ダメなの!?」
「だから明日はZEROだから、遅くなるから…」
「いいよ。俺、翔ちゃんちで待ってるから」
おいおい、痴話喧嘩かよ。
違うところでやってくれ。
「おまえ、俺んち知らないだろ」
「合鍵さえくれれば、地図アプリで調べて行くもん」
「合鍵なんて、作ってねーよ」
「でも、どうしても会いたいんだって!だって今日は夜ゆっくり会えるって思ってたのに、友だちと飲みに行くんでしょ?」
「それは、ごめん。とにかく月曜以外なら、いつでもいいって」
「だから、なんで月曜はダメなのさ?」
「だから、ZEROがあるから…」
「前に、リーダーと月曜に飲んでたじゃん」
……月曜日……。
「…とにかく、火曜ならいいから。な?頼むよ」
「……うん、わかった……。じゃあ、火曜ね?絶対だよ?開けといてね?」
「わかったって……」
どうやら一段落ついたらしく、俺は一応ノックしてドアを開いた。
「潤、お疲れ」
翔さんは何事もなかったような顔してたけど。
相葉くんは、なんだか不機嫌そうな顔で、床を見つめてた。
月曜日、ねぇ………。