第3章 Kagero
【翔side】
玄関のドアが細く開いた瞬間、中から、あるはずのない光の筋が漏れだした。
えっ?...誰か来てる...
まさか?
そんなはず...ない...けど
おずおずとドアを開き、小さな声で、
「ただいまぁ~...」
と言いながら中を覗いた。
すると風呂場の方から、
「おかえりぃ~🎵」
と、智くんがタオルで髪を拭きながら出迎えた。
いつものバスローブを羽織ってる。
「智くん...なんで...?」
彼がそこにいるのが信じられない俺。すると智くんは、しれっと普通の顔して、
「だって、今日は月曜日でしょ?」
って...にっこり笑った。
......どういうつもりなの?
ニノに告白されて...
...で、付き合うんじゃなかったの?
俺が何も言えず、立ち尽くしていると、智くんは俺の鞄を取って、
「お疲れ様、翔くん♪お風呂入って来ちゃえば~?」
と言って、鞄を抱えて、リビングにいってしまった。
俺は、混乱する頭の中を整理したくて、
智くんが言った通りに、そのまま風呂場に行った。
頭から、熱いシャワーを被って、さっき見た智くんの笑顔を思い返してみた。
もう、この前で終わりだったんじゃないの?
少なくとも、俺はその覚悟をしていたし、君だって、それが分かっていたはず...
なのに、何で来たんだよ??
ニノはどうしたんだ?
どんなに考えても、堂々巡りで答えなんか出ない。
洗い終って、シャワーのコックを捻った瞬間、脱衣所から、
「翔く~ん、着替え、ここに置いたよ」
って智が声を掛けた。
「あ、うん...ありがと..」
リビングに戻ると、智くんはラグに座ってソファーに寄りかかってテレビを見ていた。
画面には、俺たちのコンサートの映像が...
『 ARASHI AROUND ASIA』の時のものだ。
「智くん、何で..」
黙っている彼に話しかけたら、それを遮るように、
「この頃からだよね~...俺が月曜日に翔くん家に来るようになったの...」
「..ああ..そうだね...」
「あれから10年以上だよ?俺たち...凄いよね~?だって、10年だよ?10年...」
「......智くん...」
俺は、彼が言おうとしていることが分からなくて、
入り口に、ただじっと立ち尽くしていた。