第2章 Rigth Back To You
【智side】
なんだろう…?
なんか、楽屋の雰囲気が変だ。
なんとなく肌で感じた感覚を確かめるために、おれはスマホのゲームを中断して、部屋の中を見渡してみた。
原因はすぐわかった。
相葉ちゃんだ。
いつもみたいにマンガ雑誌読んでる振りしてるけど、さっきから全然ページ捲ってないし。
すごく怖い顔で、雑誌を睨み付けてる。
なんか、そんなに怖いマンガが載ってんのかな…?
と思ったとき、相葉ちゃんの視線が動いて。
チラリと一瞬だけ向けた先を見て、どきっとした。
まるで泣き出しそうな瞳で見つめた先は……翔くん。
すぐに元の雑誌へと戻っていったけど、あんなに切ない瞳をしてる相葉ちゃんを見たのは初めてで。
おれの心臓は急に早鐘を打ち出した。
今のって、まさか………。
翔くんを見てみると、いつものように新聞を広げて読んでるけど、なんとなく相葉ちゃんから身体を背けるようにして座ってる。
そして、やっぱり睨み付けるように新聞を見つめていて。
同じように、チラリと視線を上げて相葉ちゃんを見た。
また、鼓動が早くなる。
なにか、あったんだ。
間違いない。
考えたくないけど、まさかと思うけど。
相葉ちゃん、翔くんのこと……。
「…どうか、しましたか?」
いつものように、俺にぴったりとくっついてゲームをしていたニノが、小さな声で聞いてきた。
「いや、なんでも…。喉乾いたから、自販機行ってくるわ」
俺は逃げるように楽屋を出る。
その間も、さっきの相葉ちゃんの視線が頭ん中ぐるぐる回ってて。
間違いない、あれは翔くんに恋してる瞳だ。
なんで?いつから?
しかも、翔くんはそれを知ってるような……。
「智くん」
缶コーヒーを持ったまま立ち竦んでいると、不意に声を掛けられて。
楽屋の方から翔くんが歩いてくるのが見えた。
「な、に?どうかした?」
「いや、俺も喉乾いたから…」
なんて言いながら、俺の前で立ち止まって。
じっと見つめてくる。
なにか言いたげに、瞳を揺らしながら。
俺はそれを真っ直ぐに見つめながら、翔くんの言葉を待っていた、けど。
「あの、さ。一昨日の夜、智くんはニノと……」
「あ、いたいた!翔さん、リーダー、移動するよ!」
松潤の声に阻まれて。
結局、翔くんがなにを言おうとしていたのかを知ることはなかった。