第15章 One Step
【智side】
ふわふわ、ふわふわ。
なんか雲の上にいるみたい。
すっごく気持ちよくて、温かくて…
ずーっとこのままここにいたいな…
あ、でも、遠くで呼んでる声がする。
行かなきゃ…
帰んなきゃ…
大好きな、君のいるところへ。
大好きな、みんなのいる、あの場所へ………
「智くん、もう帰るよ?」
優しい声が耳に飛び込んできて、俺は目を開いた。
翔くんが、蛍光灯の光をバックに、優しい顔で微笑んでいて。
俺は腕を伸ばしてその首に巻き付けると、力を込めて引き寄せた。
「うわわっ!さ、智くん!?」
「ちゅーして、翔くん」
「いや、ちょっと、待ってって!」
「あ〜、はいはい。そういうのはおうちでやってくださいよ〜」
翔くんの声に重なって、ニノの呆れたような声が聞こえてきて。
ん?
なんで、ニノ?
「あ〜ニノ、邪魔すんなよ〜!せっかく生ちゅーが見られそうだったのに〜」
相葉ちゃんの声と。
「相葉くん…それ、見たいわけ?」
松潤の声。
そこで漸く思い出した。
あ、そういやみんなで飲んでたんだっけ。
段々ハッキリしてきた頭で、辺りを確認してみれば、俺は翔くんの膝を枕にして寝転んでて。
「…俺、いつの間に寝たんだっけ?」
身体を起こして向かい側に座る3人を見ると、3人は顔を見合わせて、肩を竦めた。
「リーダー、いつもあんな感じなの?ニノ」
「いや、俺と付き合ってるときは、あんな甘えた声出したことないし」
「しょ〜く〜ん、だっこ〜って?」
相葉ちゃんが面白がって、そう言って。
ニノは不貞腐れたように眉を潜めた。
松潤は知らんぷりでビールを口に運んでて。
俺は翔くんを見た。
真っ赤な顔で、口元を片手で隠してた。
「俺、そんなこと言った?」
翔くんは、目だけで頷いた。
マジか……
「アホらし…。帰るか、ニノ」
「そうですね」
末っ子二人が同時に立ち上がる。
「あ、待って待って、俺も帰る!」
相葉ちゃんが続いた。
「じゃ、お勘定ヨロシクね、翔くん」
松潤がニノの肩に腕を回しながら言って。
「えっ!?」
「ちょっと、気安く肩を抱くな!」
とか言いながら、ニノはそれを振り払うことはなくて。
「じゃあね〜!」
相葉ちゃんが笑顔で手を振って、3人は店を出ていった。
「…俺たちも、帰ろっか」
「うん…」