第14章 イチオクノホシ
【智side】
砂浜に並んで、サンセットを眺めた。
翔くんの肩に頭を凭れさせると、そっと肩を抱いてくれる。
水平線に触れた途端、滲んだように輪郭をなくしていく太陽がすごく幻想的で。
俺たちは昨日と同じように言葉もなく、それを見つめていた。
やがてその姿が完全に隠れてしまうと、夜の帳がゆっくりと下りてくる。
翔くんの手が、俺の手をぎゅっと握って。
辺りが闇に包まれるまで、俺たちはただ黙って波の音を聞いていた。
目を閉じると波の音に混じって、翔くんの静かな息遣いが聞こえる。
こうしていると、世界にたった二人だけ取り残されたみたい。
でも、翔くんと二人なら、きっとどこでだって生きていけるよね…。
「…智くん…」
呼ばれて、チラリと視線を上げると、翔くんはまっすぐに漆黒の海を見つめていて。
俺も同じように視線を戻す。
「…俺ね、あのデビュー会見の日…実はスゲー緊張してたんだ…」
ぽつりぽつりと話し出したのは、奇しくも昨日俺が思い出していたあの日のことで。
「思ってもみなかったデビューで戸惑ってたのもあるし…なにより憧れてた智くんと一緒だったからさ…」
ふと視線を感じて、再び視線を上げると、今度は翔くんの綺麗な瞳がまっすぐに俺を見つめていて。
俺も凭れ掛けてた頭を上げて、正面からその瞳を見つめた。
「だけど…智くんがあんまりいつも通りだったから…それ見てたら、いつの間にか緊張が解れてた」
翔くんが、微笑む。
「俺だって、戸惑ってたよ?」
「ええー?全然いつも通りだったよ?」
「そんなことないよ。どこ見てんの」
頬を膨らませて抗議すると、愉しそうに膨らんだ頬を指でツンツンつついてきた。
「智くん見て…俺、絶対この嵐を守っていこうって。智くんの傍にいるために、どんなことがあっても守っていこうって、ハワイの海に誓ったんだ」
俺と同じ事、思ってたんだ…。
「あの時は…嵐のことだけだったから…」
翔くんの手が、そっと頬に触れて。
「今度は、智くんを一生守っていくって、そう誓うよ。この海に」
言いながら、掠めるように唇を重ねた。
だから。
「俺も…誓う。ずっと、翔くんを守ってく。この先も、ずっと」
翔くんの腰を引き寄せて。
今度は俺から、誓いのキスを落とす。
静かな夜の海風が、俺たちを優しく包んでいた。