第14章 イチオクノホシ
【智side】
ホテルについて、シャワーを浴びて。
俺はベッドへ倒れこんだ。
疲れた………
翔くんってば、予定詰め込み過ぎなんだよ〜
でも、身体はグダグダに疲れているのに、頭はやたらと冴えている。
楽しかったな……
鯨、可愛かったし。
サンセットも凄かった。
太陽が沈むオレンジと、火口のマグマのオレンジの見事なコントラスト。
宇宙の色と、地球の色がいっぺんに観られるなんて奇跡だと思った。
そして、あの星空。
あれを観てから、俺の頭の中にはずっと「イチオクノホシ」が流れてる。
今まで何気なく歌っていたけど、あの歌の歌詞がすごく心に染みて…。
もしも、君に出会わなかったら。
もしも、あの時同じグループにならなかったら。
俺たちの物語も、始まらなかった。
あの星空のように、こんなたくさんの人の中で、君に出逢えた。
君を愛して、君も俺を愛してくれた。
これって、すごい奇跡だ。
君がいるから、この世界は光輝いている。
君がいるから、未来が拡がっていく。
流れ星に願ったように、ずっとずっと一緒にいよう。
そして、生まれ変わっても、きっと君を探しだすから……。
「あれ?まだ起きてたの?」
入れ替わりにシャワーを浴びてた翔くんが、部屋に戻ってきた。
「寝てるかと思ったのに…って、また泣いてるし…」
俺の顔を見て、仕方ないなぁって感じでベッドに腰掛けると、目尻から零れ落ちる涙を指で掬う。
「涙腺、緩くなりすぎじゃない?やっぱ、歳なの?」
揶揄うようにそう言った翔くんの瞳は、慈しむように優しい光を湛えていて。
「翔くん、ぎゅってして…」
両手を伸ばした俺を、優しくその腕で包み込んでくれた。
「翔くん、好き…」
想いが溢れて、言葉になって零れ落ちる。
「俺も、好きだよ」
翔くんも、答えてくれる。
「俺が流れ星になんてお願いしたか、わかる?」
そう言うと、クスッと小さく笑って。
「なに?」
おでこにキスしてくれる。
「あのね、おじいちゃんになっても、翔くんとずーっと一緒にいられますようにって」
「そっか。そのお願いは、きっと叶うよ」
「ほんと?叶えてくれる?」
「うん。本当だよ」
「翔くんのお願いは、なんだったの?」
俺が聞くと、笑みを深めて。
「死んでも、智くんと一緒にいられますように」
唇に、キスを落とした。