第14章 イチオクノホシ
【智side】
日が沈むと、一旦車に戻ってスーパーで買ったお弁当を食べた。
その間に、星空のよく見えるというポイントに移動して。
それからガイドさんの指示通り、みんな下を向いたまま車を降りる。
それにしても、寒い…
翔くんが持ってきてたヒートテックとかを借りて、更にその上からダウンコートを借りたけど。
それでも震えるくらい寒くて。
「なんで、ハワイなのにこんなに寒いの!?」
「仕方ないよ。標高3055mだから。富士山よりちょっと低いくらいだもん」
「ええっ!?そんな高いとこなの!?」
「…気づいてなかったのね…」
なんて言い合ってたら、ガイドさんの合図があって。
顔を上げたら…
「「…うわぁ…」」
それ以上は、言葉にならなかった。
満天の星空、なんて簡単な言葉じゃ言い表せない、空を埋め尽くす星の数々。
月明かりさえない星空は、360°どこを見渡しても星しか見えない。
昨日のビーチでもすごいと思ったけど、そんなの比じゃない。
プラネタリウムだって、こんなに多くの星を映してくれない。
星が瞬くなんて、よく言うけどさ。
それを初めて実感した。
キラキラ輝いてんの。
本当に宝石みたい。
たくさんのダイヤモンドをばら蒔いたみたいで…。
なんでかな、涙が出てくるよ…。
「…また、泣いてるし…」
苦笑気味の翔くんの声が聞こえたけど、俺は空から目を離すことも、涙を止めることも出来なかった。
さっき、サンセットを見た時もそうだったけど、勝手に涙が出てくんの。
今まで見たこともない素晴らしい景色を見て感動したって、もちろんそれもあるけど。
きっと、翔くんが隣にいるから。
翔くんと二人だけで、この素晴らしい景色を一緒に見ることができたから…。
バカみたいに涙を流す俺の手を引いて、翔くんがみんなから離れたところへ連れてってくれる。
ガイドさんの声も小さくなって。
静かな世界で、俺たちは寝転んで、言葉もなく降ってきそうな星空を眺めた。
まるでこの世に俺と翔くんの二人だけになったみたい。
「…智くん…」
囁くように名前を呼んで、翔くんの手が俺の手をぎゅっと握る。
「…もう、離さないからね…?」
翔くんの声も、涙混じりで…。
泣きすぎて、声も出せない俺は、答えの代わりに強くその手を握り返した。
今日のこの星空を、きっと一生忘れない。