第14章 イチオクノホシ
【翔side】
ガッツリばれてるじゃん///
『恋人同士みたいだ』と言ったご婦人に、
『よく言われるんです♪』
そう爽やかスマイルで返しといたけど。智くんのハートの目、あれ何とかしてもらわないと...
「もう少しですから、みなさん頑張って~」
話の面白いガイドさんが、参加者たちに声を掛ける。
登山と言っても、それほど大変でもなく、あっという間に『ハレアカラ山頂』に到着した。
ツアー会社の方で用意してくれたお茶が配られ、みんなで乾杯。20名ほどの参加者の半分近くが日本人。
でも自信なくすくらいに俺たちには気づかない。
「全然ばれないじゃん♪」
「だね~♪でも、手は繋げないからね!」
そうくぎを刺すと、智くんは膨れた。言いたい事、先回りして牽制されて、面白くないんだろう。
「火口はさ映画のロケ地にもなったんだ。『2001年宇宙の旅』知ってる~?」
俺のうんちくを、あんまり聞いていないような君に、俺は肩をすくめて話をやめた。
そして俺たちは、みんなから少し離れて、その時を待った。
.........
辺りはゆっくりと暮れていく。
幾重にも折り重なる雲のラインに、静かに沈んでいく太陽。
『明日の朝まで、私のことを忘れないで...』
そう願いを込めて、己の一番美しい姿を見る者の目に焼き付けているような、そんな夕陽は、360度見える雲の海全てを、オレンジ色に変えていく。
『息をするのも忘れそう』
参加者の誰もが、感動で声も出ないようだ。実際俺たちも...
思わず智くんの肩を抱き寄せた。
智くんは一瞬俺の顔を仰ぎ見たけど、そのまま壮大な夕陽に
吸い寄せられるように視線を戻した。
......陽が...沈む...
それだけのことなのに、どうしてこんなに感動するのだろう。
...ヤバい..泣きそう...
グッと堪えて、そっと智くんを見ると、もうボロボロ泣いていた.....マジかよ...
「智くん...」
こっそりと手を握ると、智くんは夕陽で赤く染まった顔で、
「翔くん、連れてきてくれてありがとう。来る前はめんどくさい、翔くんひとりで行けよ、って思ってたけどさ。
俺来てよかったよ~...絶対忘れない...」
...感動的なこと言ってるけど、何気にチクチク、酷いこと言ってるよね?
...でもほんとに、君と一緒に来れてよかった。