第14章 イチオクノホシ
【智side】
なんか、やっつけ感満載だったけど…
気持ちよかったから、まぁいっか。
吐き出したもんでベトベトの手を拭いて、さっと服を整えて。
慌ただしく部屋を後にする。
「ねぇ〜今度はどこ行くの〜?」
「ハレアカラ火山に登って、サンセットと星空見学ツアーだよ〜」
時計を見ながら、競歩みたいな速さでエントランスへ向かって。
ちょうど滑り込んできた迎えの車に乗り込んだ。
「「ギリギリセーフ…」」
思わず顔を見合わせて、笑っちゃった。
車には他に日本人の老夫婦が乗ってて。
チラリと俺たちを見ると、にっこり笑って会釈してくれた。
俺たちも会釈を返して、帽子の鍔を下げる。
「ねぇ…バレたと思う?」
小声で訊ねると。
「大丈夫…じゃないかな?でも、手は繋いだり出来ないよ?」
翔くんも小声で返してきた。
「わかってるよ、それくらい」
口を尖らせて抗議すると、クスッと笑われた。
途中、ドーナツを食べたり、スーパーで好きなお弁当買ったりして、山頂までもうちょっとってところで車を降りた。
山頂まで徒歩で登って、そこでサンセットと星空見学なんだって。
ガイドさんの話を聞きながら、ゆっくりとしたペースで登っていく。
「良かったら、荷物持ちましょうか?」
途中、一緒に参加してた老夫婦の奥さんの方の息が上がってるのを見て、翔くんがさりげなく声を掛けた。
「でも…」
「大丈夫です。俺たちまだ若いんで」
完璧なアイドルスマイルでそう言って、二人の荷物を受け取る。
翔くん、ちょーカッコいい…❤
俺の彼氏、顔も中身もめちゃめちゃイケメン…❤❤
俺が目をハートにして見てると、片方をこっちに渡してきた。
「…その顔、やめて…」
余程だらしのない顔をしてたのか、翔くんが恥ずかしそうに小声で言う。
そうして、俺たちは二人分の荷物を抱えて再び山頂目指して登り始めた。
「すみませんねぇ…」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
奥さんの言葉に、翔くんが首を振る。
「お二人は、お友だちですか?」
「…ええ、まぁ…」
本当は、恋人だけどね。
心の中で付け加える。
「ずいぶん仲の良いお友だちなんですねぇ。まるで恋人同士みたいで。羨ましいわ」
唐突に飛び出した言葉に、俺も翔くんも絶句した。
二人は、屈託のない顔で微笑んでいた。