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スパイラル 〜螺旋の先〜【気象系BL】

第14章 イチオクノホシ


【智side】

俺は必死で鯨に遭えますようにってお祈りした。

そりゃあね、俺だってわかってるよ。
翔くんが俺を揶揄うのにそんなこと言ってきたってことくらい。

でもさ、冗談でも考え直したほうがいいのかな〜なんてさ。
そんなこと言われたら、焦るに決まってるじゃん!

だって、ずっと、ずーっと好きだったんだよ?
もう人生の半分以上、翔くんのことが好きで。
辛くて苦しくて、何度もやめようってそう思って。
それでも諦められなくて。

ようやく、思いが通じ合ったのに。

やだよ…
別れるなんて、やだ…。

「ちょっと、マジ…?」

半泣きの俺を見て、翔くんが本気で焦りだした。

「見られるって、絶対!HPにはさ、余程のことがない限り見られますって書いてあるから」
「だって、翔くんの引きの弱さは特別だもん…」
「失礼な!智くんだって別に強くないじゃん!」
「だから、きっとダメに決まってるもん…」
「そんなことないって!」

翔くんの手が、一瞬俺の手を掴もうと伸びてきて。
でも、慌てたように引っ込められた。

いくらハワイとはいえ、誰が見てるかわかんないもんね…
日本人も、一緒に乗ってるし。

でも、寂しいな…

俺の気持ちが通じたのか、翔くんの手がこっそり伸びてきて。
俺の手をぎゅっと強く掴むと、すぐさま離れていった。

「部屋でゆっくり…ね?」

ゾクッとする低温ボイスで囁かれて、顔が熱くなるのを感じた。

それから、翔くんが買ってくれたサンドイッチを食べながら鯨が出てくるのを待ってたんだけど…。

「…来ねぇ…」

待てども待てども、待ち人来ず。
じゃなかった、鯨は現れず。

俺は、こうやってのんびり待ってるのは慣れてるし、特にどうってこともないけど。
翔くんが、目に見えてイライラしてきた。

「まぁまぁ、そのうち出てくるんじゃない?船長さんも一生懸命探してくれてるし」
「そのうちっていつ!?」
「いや、まぁ、帰港までには?」
「だってもうあと一時間もないじゃん!」

いつの間に立場が逆転したのやら、俺が翔くんを宥めてて。
なんか、俺たちらしくて笑える。

「なんで、笑ってんの?」
「いや…あ!」

その時。
翔くんの向こう側に、潮が噴き上げられるのが見えた。

「翔くん!あれ!あれ!」

振り向いた瞬間、大きな塊が水面から現れる。

「「出たあーっ!!!」」


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