第14章 イチオクノホシ
【翔side】
夕べハードに運動した俺たちとしては、
本当ならばお昼くらいまで寝ていたいところだけどさ。
時間は限られてるんだよ~?
鯨さんが待ってるぜ///
何度も大あくびを繰り返す智くんを引きずって、
ホテルの朝食ブッフェのレストランへ。
「智くん、お残しはダメだからね~?」一応くぎを刺す。
「分かってるよ~!翔くんこそさ、食べ過ぎると船酔いするよ~」
軽く朝食を済ませ、俺たちは忙しくホエールウォッチングの集合場所に急いだ。
ハーバーで受付をすると、外国人ばかりの中に、二組の日本人カップルがいたが、お互いのことしか見えてないのか、俺たちには気づかなかった。
本来ならばもっと寒い時期の方がホエールウォッチングには適しているんだそうで。
もしも鯨を全く見ることができなかったら、金額は返金されるらしい。
「翔くん、大丈夫~?こういうのさ、『持ってない男櫻井翔』としては微妙だよね..」
智くんが俺を上目遣いに見てる。
...そう言うあなただってさ...ゆうても、そんなに持ってる訳でもないじゃん..
言い返したいのをグッと堪えて、
「よ~し!これで俺と智くんの相性占おうぜ!鯨を見れたら、相性抜群!!」
「見れなかったら~?」
「...そんときは...」
「え~!!やだよぉ///見れなかったらどうすんだよ~」
...焦る智くんが可愛くて...
もしも見れなくても、鯨のぬいぐるみでも買ってやろうって思ってたのに、こんな必死な顔されると、つい揶揄いたくなっちゃうよ...
「そん時は...考えた方がいいのかな~...」
深刻そうな顔してみせると、
「ねえ、そんな大事なこと、鯨になんか任せらんないよ!ちょっと~!翔くんてばぁ///」
うじうじしてる彼を置いて、俺は近くのショップで飲み物やサンドイッチを買った。
そして。
いざ、鯨と対面!!...できるかどうか?
クルーザーは大海原へと滑り出した。
大型のクルーザーは、シーズン終了間際ということもあるのか、比較的空いていた。
「智くん、こっち!」
俺たちは人気の少ないデッキ後方の椅子に並んで腰を下ろした。
「...ねえ..何してんの~?」
手を合わせ、ぶつぶつ言ってる智くんに聞くと、俺の顔も見ずに、
「お祈りだよ!鯨が来ますように!って」
...かっ、可愛い///