第14章 イチオクノホシ
【智side】
俺はさぁ、怒ってるわけ。
だってさ。
自分が夜まで我慢しろって言ったんだろ!!
なのにさ、人が寝てる間にイタズラしやがって…
しかも結局、サンセットを眺めながら3回もイカされたし…
いや、まぁ、超気持ちよかったんだけどね……
なんだろう?
やっぱ、非日常的なこのハワイの解放感がそうさせんのかな?
ありえないレベルでの気持ち良さっていうか…
だけど、それとこれとは別なの!!
「そろそろ機嫌治してよ〜」
ホテルのレストランでディナーを食べながら、翔くんが猫なで声で言ったけど、俺は眉間にシワを寄せたまま、無視して食べ続けた。
翔くんが予約してくれてた、フランス料理のフルコースはめちゃくちゃ旨かった。
でも、それとこれとは別だし!!
チラッと視線を向けると、翔くんは全然謝ってると思えないニヤけた顔してて。
その顔には「智くん、気持ち良さそうにヨガッてたくせに〜♪」って書いてある。
そうだけどね!!
あ、いいこと思い付いた。
今夜はさ、俺が翔くんをアンアン言わせてやったらいいんじゃね?
だって俺、今日は散々アンアン言わされたし。
次は翔くんの可愛い声、聞きたいなぁ〜♪
よし、そうとなったら、どうやって襲ってやろうかなぁ…。
「ど、どうしたの…?」
夜のあれこれを想像して、ぐふふと不気味な笑いを漏らした俺を、翔くんはちょっとビビった顔で見てた。
部屋に戻って窓の外を見てみると、空に星が幾つか瞬いているのが見えて。
「ねぇ、翔くん!もう一回、ビーチに行こう?星、綺麗だよ、きっと」
手を差し出すと、微笑みながら握ってくれた。
そのままテラスを通って、ビーチに出る。
闇に包まれたビーチは、昼間と違って人は殆どいなくて。
俺たちはお互いの腰を抱き合って、身体をくっ付けて歩いた。
「歩きにくい…」
ぴったり寄り添って歩いたから、翔くんが文句言ったけど。
その顔は緩んだままだったってことは、嫌じゃないってことだよね?
人気のないところまで歩いて、並んで砂浜に腰を下ろした。
手を伸ばして、翔くんの頭を引き寄せると、抵抗もなく俺の肩に頭を乗せてくれる。
そのまま、腰に腕が回ってきて、甘えるように体重を預けてくれた。
「…凄い、ね…」
彼の声に導かれるように空を見上げると。
降るような満天の星空が、広がっていた。