第14章 イチオクノホシ
【智side】
青い海、青い空。
目の前に広がるのは一面の青で。
こういう景色、初めてって訳じゃないけど。
ってか、海なんてしょっちゅう見てるけど。
ハワイだって初めてじゃないけど。
なんで、こんなに感動するのかなぁ〜
俺は隣で瞳をキラキラさせながら、目の前の青を見つめる翔くんの横顔を見つめた。
きっと、翔くんが一緒だからだ。
翔くんがいてくれるから、今までなんとなく見ていたものも、輝いて見える。
翔くんが、ここにいるから…
手を伸ばして、翔くんの手をぎゅっと握った。
翔くんは、笑顔で強く握り返してくれた。
「すごいね…」
「うん…」
俺は、彼の肩に頭をちょんと乗せてみる。
翔くんはくすっと笑って手を解くと、肩を抱き寄せてくれた。
「…智くんの、色だね…」
目の前に広がる青を眺めながら、翔くんが呟く。
そのまま、無言でその青を見つめた。
さらりとした海風が、俺たちの頬を撫でていく。
その風に導かれるように翔くんを見上げると、澄んだ綺麗な瞳がまっすぐに海へ向けられていて。
ちょっと俺の方を見て欲しくて、少し背伸びをしてその頬に唇を押し当てた。
「ちょっと、なにやってんの」
不意打ちだったのか、恥ずかしそうに頬を手で隠すから。
「ねぇ〜、ちゅーしたい」
ぎゅっと腰を引き寄せて、おねだりしてみた。
「ええっ!?ここで?」
翔くんが、辺りを見渡す。
一応隣の部屋からは見えなくなってるけど、やっぱり人目が気になるんだよね?
でもさ、もう我慢できないんだけど。
「じゃあ、部屋に入ろうよ。それなら…」
「やだ。ここでちゅーする!」
「いや、ほら、誰が見てるかわかんないし…」
「翔くんは、俺とちゅーしたくないの?」
「…そんなこと、ないけど…」
翔くんが、もごもごと口籠った。
もうひと押しかな?
「ねぇ〜お願い〜」
俺は最大級の甘えた声を出すと、唇を突き出して目を閉じた。
さあ、来い!
「ちょっと…」
戸惑ったような声がして、だけど肩に手が置かれて。
今か今かと待ってたのに、なかなか唇はやってこなくて。
痺れを切らして抗議しようと目を開けた瞬間、超至近距離で翔くんの顔が見えて。
掠めるように、唇が重なった。
「も、もう…」
離れようとした頭を引き寄せて、なにかを言いかけた唇を塞いだ。