第14章 イチオクノホシ
【翔side】
もう俺はわくわくが止まらない///
智くんの荷物を、強引に奪い取り、
「パスポート?持った?」
一応確認すると、
「パスポート?そんなの持ってきてないよ!どこ行くかも分かんないのに!」
「じゃ、急いで持ってきて!詳しいことは車の中で話すから〜」
急かす俺を睨み付ける彼は、
「やだ!分かんないから、行かない!第一俺..休みのことさっき聞いたんだよ///」
...智くんが予想以上にごねてる。多少は予想してたけど...
...よし、こうなったら...
「一緒に探しに行こっかとパスポート..」
言うが早いか、智くんをエレベーターに押し込んで俺も後から乗った。
「翔くん!あのさぁ〜」
「ごめん!!智くんをビックリさせたくって、黙ってたんだ...」
「びっくりってさ、それにしたって..」
「何とか事務所に頼み込んで、一緒の休みにしてもらって。
日本を離れて、人目を気にせず、ふたりで思いっきり愛し合いたかったんだ!」
「愛し合うとか..」
「もしかしたら鯨も見れるかも、だし..」
これには予想通り、智くんは反応した。
「...鯨..近くで見たいでしょ〜?」
「見たい!どこで見れんの?」
「ハワイのさ、マウイ島。」
「マウイ島....15周年とき翔くんが行った..」
「あれはカウアイ島。マウイには川口くんじゃなくって、智くんと行きたかったんだ。」
....ほらほら、顔が変わってきた。
「で、パスポートは?」
「あ、待ってて。直ぐに持ってくるよ♪」
.....はい!一丁上がり〜♪♪
智くんはパスポートだけじゃなくって、日焼け止めだの、海パンだの、ルアーだの、
いろいろ持ってきた....
「ルアーは、現地で調達しようよ。」
「現地?そっか♪そ〜だね♪よし。じゃ、行こっか!」
3分前まで渋ってた人とは思えない、ノリノリの智くんと、俺は一路、成田空港に向けてハンドルを切った。
この旅行のために、俺は大分前から準備を進めてきた。智くんとの、3泊5日のマウイ島旅行。
隣ではしゃぐ彼は、四捨五入すると、もう普通におっさんで。まあ、俺も同じで。
でも、気持ちは出会った頃のまんま。
「翔くん、成田、まだかなぁ?」
....ほんと、可愛いったら///
俺は少しだけ、アクセルを踏み込んだ。