第13章 キミの夢を見ていた
【雅紀side】
ほんとはさ。
まだ、悔しいし、悲しいよ。
翔ちゃんのこと、まだ大好きだから。
でも、さっきの男らしく「翔くんをください」って頭を下げるリーダーと、その横で恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに頬を染めて、リーダーに倣って頭を下げる翔ちゃんを見てたらさ、もうなんも言えないなって、そう思ったんだ。
だって、あんなに幸せそうな翔ちゃん、見たことないもん。
俺も、松潤も、きっとどんなに頑張っても、翔ちゃんにあんな顔させることはできない。
できるのは、リーダーだけなんだ。
努力したって、どうにもならないことがある。
それがイヤってほどわかったから…。
もうさ、諦めるしかないじゃん?
俺、あんな風に綺麗に笑う翔ちゃんに恋したんだもん。
だから、ずっとあんな風に笑っててほしい。
それが俺の隣じゃなくても。
今は、負け惜しみでもなんでもなく、心からそう思えるからさ。
だから、笑顔で祝福するよ。
おめでとう、翔ちゃん!
…リーダー、ちょっとムカついてんのは、許してね?
松潤と3人で話してるリーダーの背中に向かって心の中で舌を出してると、ふとリーダーを寂しそうな瞳で見つめているニノが目に入った。
「ニノ…大丈夫〜?」
声を掛けると、無理矢理作ったってバレバレの笑顔で振り向いた。
アカデミー賞俳優の顔じゃないよ、それ。
上手く笑えてないじゃんか…。
でも、敢えてそこには触れないで。
悔いはないよって言い切ったら、苦笑してた。
なにも言わないけど、それってニノも同じ気持ちだってことだよね…?
「…ねぇ、ニノ。今度さ、ゆっくり飲みに行こうか?松潤も誘って、3人でさ」
すると、嫌そうな顔をして。
「3人で傷の舐め合いするんですか?嫌ですよ、そんなの」
可愛いげのない声で、そう言った。
「そうじゃないよ〜。3人で健闘を称えあいたいなって思ってんの!俺たち、よく頑張ったよね〜って!」
「それが傷の舐め合いじゃなくて、なんなんですか」
わざとらしくため息をついてるけどさ。
ちょっと、嬉しそうに頬が緩んでるの、バレバレだってば。
「かわいい〜、ニノ!」
「うわっ!やめろっ!」
頭をグリグリ撫でてやったら、本気で嫌そうに逃げていく。
その向こうに、笑ってる翔ちゃんが見えた。
翔ちゃん。
今度こそリーダーと幸せになってね。