第13章 キミの夢を見ていた
【智side】
スタジオに着いて、手を離すのがちょっと寂しかった。
そのまま、なんとなく気恥ずかしくて無言で楽屋に向かう。
楽屋のドアの前に立って、でもなんとなく開けるのを躊躇して。
翔くんの顔を見上げたら、彼も少し緊張してるのか、微妙に顔が強張ってた。
大丈夫、俺がついてるよ。
そう伝えたくて、さっき翔くんがしてくれたみたいに、小指を絡めてきゅっと握る。
そうしたら、ちょっとだけ頬を緩めて。
ドアノブに手を掛けて、開こうとした瞬間。
後頭部に、ドカッとなにかが当たった。
「痛って!なに!?」
振り返ると、サングラスを掛けて不機嫌そうな顔した松潤が立ってる。
「邪魔。早く入ってよ」
「だからって、叩くことないじゃんか!」
彼は肩に鞄を抱えてて。
それで俺の頭を叩いたらしい。
「朝からムカつくんだよ、そのデレ顔。そんなだらしない顔で収録しないでよ?」
ぶっきらぼうにそう言ったけど、言葉には今までいっぱい含まれてた棘が全然なくなってて。
俺たちのこと、許してくれてんのかなってなんとなく感じた。
翔くんを見ると、ちょっと哀しそうな瞳で松潤を見てたけど。
俺の視線に気づくと、にこりと微笑んでくれた。
「ほら、早く入ってよ」
松潤に背中を押されて、二人揃って楽屋に入る。
「あ、翔ちゃん、リーダー、おはよう!」
相葉ちゃんが、いつものように元気に挨拶する。
「遅いですよ。朝からなにやってたんですか?二人で」
ニノは、チラッとこっちを見ただけで、またDSに視線を落とす。
松潤は、無言のままパイプ椅子に座って。
俺と翔くんは、入口のところに立ち尽くしたまま、顔を見合わせた。
彼が不安げに瞳を揺らすから。
ここは一発俺が男らしく言わないとなって覚悟を決める。
なんたって、俺、旦那だし!
「あのさ…ほんと、みんなごめん!!」
ガバッと頭を下げると、隣で翔くんも慌てて頭を下げるのが見えた。
「俺らのことで、いろいろ振り回して、傷付けて…。許してもらえるなんて思ってないけど…でも、俺、これからもこの5人でやっていきたいから…。だから、約束する。絶対、翔くんのこと、幸せにするから!俺の全部かけて、絶対、幸せにしてみせる!だから…翔くんのこと、俺にください!!」
翔くんの手をぎゅっと掴むと、もう一度、深々と頭を下げた。