第12章 同じ空の下で
【智side】
重ねた唇は、微かに震えてて。
すぐに離れていった。
「なんか…緊張する。いつもさ、顔を合わせればすぐに抱き合うだけで…こうやって、ちゃんとお互いの顔見て話すこともなかったよね…。ほんと、馬鹿みたいだ。ちゃんと見てたら、あなたがどんな気持ちでいるのか、すぐにわかった筈なのに…」
自嘲するように顔を歪めて、翔くんは言った。
俺は、手を伸ばしてその頬を撫でながら、首を横に振る。
「無理だよ。だって、気持ち、悟られないように隠してたから。向き合って話をしたらバレちゃうから、だからすぐにベッドに行くように…わざと誘ってたんだ」
「智くん…俺も、そうだよ…」
「俺も…翔くんも、馬鹿だね」
「うん…」
「でもさ…俺たちらしいかもね?」
俺の言葉に、彼は何度も瞬きする。
「…どういうこと?」
「俺と翔くんってさ、全然違うじゃん?考え方とか…でも、時々すごく通じ合えるなって思う瞬間があって…」
「うん。俺も思ってた」
「だから…怖くて踏み出せなかったのも、通じてたんだね?」
「そんなこと、通じなくてもいいのに…」
言いながら、翔くんの顔が緩む。
「じゃあ、これも通じてる?智くん、好きだよ」
囁きながら、唇が近付いてくる。
「うん…俺も、好き…」
その頭を引き寄せて、俺の方から唇を押し付けた。
すぐに翔くんの舌が、咥内に侵入してくる。
舌を絡め合って。
唾液まで奪い合うようなキスをして。
翔くんの舌が、首筋に降りてきたとき、ふとさっき緊張で汗かいたことを思い出した。
「ちょっと待って…シャワー浴びたい。汗臭いし…」
「大丈夫。智くん、いい匂いする」
「いやいや、んなわけないし!」
「ほんとだよ。いつも赤ちゃんみたいな匂いするよ?不思議だよね…」
翔くんは、俺の首に鼻を当てて、クンクンと匂いを嗅いでる。
「ちょ、やだってば!」
恥ずかしくなって、彼の身体を押した。
仕方なさそうに小さく笑って「じゃあ、浴びてくれば?」って言うから、その腕を逃れて、ベッドルームに入る。
クローゼットを開けて、いつものバスローブを探すと、その姿はなくて。
捨てちゃったのか…
そうだよね…
少し悲しくなった時、翔くんが部屋に入ってきた。
「え?ないの?」
それを伝えると、翔くんは驚いて。
「…まさか…雅紀…?」
悲しげに、顔を曇らせた。