第12章 同じ空の下で
【翔side】
智くんがちょっと口をすぼめてる。
でも俺はそれには気付かない振りして、彼の手を引いてリビングに入り、暖房をつけた。
「ビールにする?それともコーヒー?」
「...じゃ、コーヒーにする...」
拗ねてる君がホントに可愛くって...俺だってすぐにでもベッドに連れ込みたいよ~?でもさ...
コーヒーを落としながら、落ち着きたいのは俺の方なんだ。
「はい、どうぞ...」
「ありがと」
何から話せばいいのか...しばし思案する俺を、智くんは尋問を待つ容疑者のように俺を上目遣いで見ていた。
「俺たちさ...気持ちを伝えないまま始まって、そのままズルズルと10年も惰性で続いてしまったんだ...
何度も後悔したよ...何で好きだって言わなかったんだろうって...」
「俺も、ずっと言いたかった...でも、怖くてさ...」
その言葉に俺は苦笑う。
「俺も怖かった...智くんに身体だけの関係だって、そう言われてしまったら、もう会えなくなるって...そう思って...
だから、伝えられないまま、ずっと月曜日に会ってたんだ...ホントは他の日にも会いたいし、思いを伝えて抱き締めたかった...
最初さ、驚いたでしょ?いきなり身体の関係迫るって、ないよな~...」
その言葉に君はふにゃっと笑って、
「驚いたけど、嬉しかったよ。大好きな翔くんが誘ってくれたってだけで...俺、舞い上がってて...幸せだった...初めて抱いてくれた時...」
......何やってんだよ、俺。
こんなにふたり同じだったのに...
どんだけ回り道すれば分かるんだよ...
バカな自分にため息が出た。すると智くんは、
「ニノと付き合ったのも、翔くんを忘れたいって、そう思ったから...好きだって言えない苦しさから、逃げ出したかったんだ...ごめんね...俺、勇気がなくて...」
「智...」
俺は思わず彼の手を握った。見つめ合ったその瞳に、情けない顔した自分が映っていた。
「雅紀や潤も傷つけた...全て、俺がズルいせいだ...申し訳なかったって、思ってるよ」
「ニノにも...3人に謝ろう。許してもらうまで、何度でも」
...涙が溢れそうだ...
「翔くん、キスして...もう離さないっていう、誓いのキス...」
俺はゆっくり唇を落とした。