第12章 同じ空の下で
【智side】
頬っぺたにキスすると、翔くんは茹でダコみたいに真っ赤になった。
やべー、ちょーかわいい……
さっきの運転してるときのカッコ良さとは別人のように、乙女みたいに恥じらいながら俺から視線を逸らすその仕草が、堪らなく可愛くて。
ダメ!
我慢できん!
ガバッと抱きついちゃった。
「ちょっ!こんなとこでダメだって!」
翔くんが焦って、すごい力で引き剥がしにかかる。
「だって、我慢できないもん!」
俺は、必死にしがみつく。
「監視カメラに映るでしょ!」
「いいじゃん、別に」
「よくないし!」
その時、ガタンという音とともにエレベーターが止まって。
渾身の力で引き剥がされた瞬間、扉が開いた。
助かったとでも言わんばかりに、素早く降りてって。
取り残された俺は、悲しくなってその場に立ち尽くした。
「ちょっとなにやってんの!」
それに気付いた翔くんが、慌てて手を引っ張ってくれて。
閉まるドアに身体をぶつけながら、エレベーターを降りた。
「…全くもう…」
ため息なんかつくから、呆れられちゃったかなってシュンとしてたら、繋いだままの手をグイッて引っ張られて。
翔くんの部屋の前まで、なぜかダッシュさせられた。
ガチャガチャと音を立てて、乱暴に鍵を差し込んで扉を開けようとしてる。
だけど、焦ってんのか、なかなかうまくいかなくて。
そんな姿見たことなくて、茫然とそれを見てたら、漸く開いた扉の中に押し込まれた。
途端に飛び込んでくる、翔くんちの、匂い。
懐かしくて、嬉しくて、それを思いきり吸い込んでたら、後ろからぎゅっと抱き締められる。
パタンと扉の閉まる音。
それを合図にして、俺は彼の腕の中で身体を反転させる。
至近距離で出逢う、漆黒の瞳。
その瞳いっぱいに、俺が映ってる。
「…俺だって…触りたくて仕方なかったんだからね…?だから…」
言いかけた言葉を、唇で吸いとった。
上唇を舐めると、小さな喘ぎ声を漏らして、薄く唇を開く。
素早く舌を差し込むと、待ち焦がれたように彼の方から舌を絡めてきてくれて。
それだけで、脳ミソが、痺れる。
舌を絡め合って、角度を変えながら互いの咥内を貪って…。
もうすぐに抱き合いたいのに。
「智くん…ちゃんと、話がしたい…」
君はそう言って、俺から離れたんだ。