第12章 同じ空の下で
【翔side】
さっきまで顔一面に『ヤリたい』って書いてあった男が、今は俺の手を握って泣きじゃくってる。
ホントに、君ってさ...
そう言うとこなんだろうな~...って思うよ。
『目が離せない』
テレビで見せるほんわかした雰囲気の裏で、本とのあなたは、次々湧き上がる感情に正直で、それはいつも少年みたいに純真...
それが羨ましい俺は、自分に持ってないものを持ってる『大野智』という人間に惹かれるんだ。
もしかしたら、君から離れた理由の一つに、その純真さが怖かったのかもしれない...
どうしても、自分のズルさを思い知るから。
それでもやっぱり、
俺は君のことが好きだった。
誰といても、何をしてても、忘れることなんか出来なかった。
助手席でいつまでもしゃくりあげる智くんを、1秒でも早く腕の中に閉じ込めたくて、自然とアクセルを踏み込む。
...ヤバいヤバい、こんなとこで捕まったら、洒落になんね~し///
赤信号がもどかしくて、路駐の車に舌打ちをして、
車はやっとマンションの駐車場に滑り込んだ。
急いで運転席を降りて、助手席のドアを開けて手を差し出すと、泣きはらした真っ赤な目で、智くんが笑った。
「何だよ...それ..」って。
でもちゃんとその手を取って、ひょいっと助手席から滑り降りた。
流石に手を繋いだままって訳にもいかないからいったん離したけど、どうしても彼に触れて居たくて、俺はそっとその背中に手を回しそっと彼をエスコートした。
顔が近い...
目を見合わせて思わず笑みが零れた。
そう言えば、ここで毎週会ってても、こんなことしたことなかったな~..
そう思うと、何だか照れる...
で。
新しく始める感じが、新鮮で嬉しい。
.....にしてもだ。
このエレベーターって、こんなに遅かったか??
思わずイライラしながら階数を表示するボタンを見てる俺を、智くんはクスリと笑った。
「何だよ~?」
少し睨むと、
「翔くんのそう言うとこ、好きだよ」って...
もうさ...
しれっとそんなこと言わないでよ...
しかもそんな可愛い顔して笑いやがって///
何だか悔しくって、背中に回した手をグイッと引き寄せると、近付いてきた智くんは、そのまま俺の頬に音を立ててキスをした。
俺は、恥ずかしほど真っ赤になった。