第12章 同じ空の下で
【智side】
「智くん…あなたが好きです…俺と、付き合ってください」
翔くんの言葉を、何回も何回も頭の中で再生してみる。
だって、信じられない。
そんなこと言ってくれるなんて、思ってもなかったんだ。
松潤と、付き合ってるんだと思ってた。
松潤のこと、好きだって言われるんだと。
だけど、それでもいいから、俺の気持ち伝えようって、そう、思って…なのに。
茫然と見つめてた翔くんの瞳から、涙が零れ落ちる。
それが、ダイヤモンドみたいにキラキラ光りながら、幾粒も幾粒も頬を流れ落ちてって。
綺麗だな……
こんなに綺麗なもの、見たことないかも……
「…智くん。智くんってば!」
「ふぇっ!?」
気がついたら、目の前に翔くんのどアップ。
あれ?
俺、目ぇ開けたまま、トリップしてた…?
「ふぇっ、じゃないよ、もう……」
呆れたようにため息を吐いて。
それから悲しげに、目を伏せた。
「…返事、くれないんだね…やっぱり、こんな俺のことなんて…」
呻くように呟くその腕を、慌てて掴んだ。
「好き!俺も好きだよ!翔くんのこと、好きだから!」
慌ててたから、怒鳴るように言っちゃって。
翔くんは大きな瞳を更に大きく見開いて。
それから、ブッと噴き出した。
「色気ね〜!なんだよ、それ!もうちょっとムードとかさ…」
笑おうとした顔がくしゃっと歪んで、また大粒の涙が溢れる。
「翔くん…」
堪らずに、彼の手を握りしめた。
「…ダメかと、思ったじゃんか…」
「…ごめん…ごめんね…」
「なんだよ、もう…」
止まらない涙は、顎を伝ってポタポタと落ちていく。
それが、翔くんの向こう側に見える夜景の光を反射して、やっぱり宝石みたいに美しく光ってて。
「…ほんとに、綺麗…」
「智くん…?」
「すごく綺麗だよ、翔くん…」
握っていた手を引き寄せて。
ぎゅっと、抱き締めた。
「ちょっと…こんなとこで…」
居心地悪そうにモゾモゾと動くから、もっと力を込めて、抱き締める。
「大丈夫。暗くて、わかんないよ…」
耳元で囁くと、ピクリと震えて。
それでも、戸惑いがちに抱き締め返してくれた。
「好きだよ、翔くん。ずっと、好きだった。Jrの頃からずっと。翔くんだけが、好きだったんだ…」
押さえつけて閉じ込めていた想いが、涙とともに濁流のように流れ出した。