第12章 同じ空の下で
【智side】
「どこ行く?」
「どこでも」
「なんだよ、それ。適当過ぎでしょ。何処っていってくれないと困るじゃん。そっちがドライブ行こうって言ったくせに」
「だってわかんないよ。俺、免許持ってないから、どの辺りまで行けるとか、全然わかんねーもん」
「え〜……」
翔くんは、そう言って沈黙して。
「わかった。じゃあ適当に流すよ」
ハンドルを左に切った。
それっきり、黙りこくってしまって。
俺も翔くんがどういうつもりで連絡してきたのかわからないから、こっちから話しかけるのも気が引けて。
松潤とどうなってんの?
相葉ちゃんとどうなってんの?
訊きたいことは山ほどあるけど、怖くて訊けなかった。
最近、3人の様子がおかしいのは、さすがの俺でもわかってた。
なんとなくだけど、相葉ちゃんとは距離ができていて。
その代わりに松潤がベッタリ横にくっついてた。
もしかして、相葉ちゃんとは別れて、松潤と付き合うことにしたのかも…。
そう思えた。
だからこそ、訊けなかった。
松潤と付き合ってるよ。
松潤のこと、好きなんだ。
そう言われたら?
俺、立っていられる自信がない。
情けないって思うけど、そんなの聞かされたら自分がどうなるのかわからない。
怖い。訊くのが怖い。
自分で翔くんと離れることを選んだくせに、彼が俺以外の誰かを本気で好きになることに耐えられない。
だったら、いっそなにも知らない方が…
『ばっかじゃないの?』
頭の片隅で、ニノの怒りの声が聞こえた気がした。
『ちゃんと気持ちを伝えなよ。そして、報告すること』
ニノのバカ。
んなこと簡単に言うなよ。
それが出来ればさ、この10年の間にとっくに恋人同士になってるっての。
たった一言。
好きって、ただ一言が言えなくて…。
翔くん、今、なに考えてる?
俺のこと、本当は好きでいてくれたはずだよね?
じゃあ、今は?
今はどう思ってんの…?
ぐたぐだと頭で考えていて。
俺はいつの間にか眠ってしまってたらしかった。
「…く…とし…ん…智くん、起きて」
身体を揺らされて、目が覚めた。
「ちょっと、降りよう」
そう言って、翔くんはエンジンを切ると、ドアを開けて出ていく。
辺りを見渡すと、街灯がポツリとあるだけで。
「どこ…?」
「公園」
助手席のドアを開けながら、翔くんが微笑んだ。