第12章 同じ空の下で
【翔side】
何を話せばいいのか、
何から伝えればいいのか、
そんなの全然考えてもいなかった。
でも、考えてればまた動けなくなってしまうから...勇気なんか出る筈ないって、分かってるから...
悩む前に、智くんの番号を出してもう一度画面をタップした。
当然だけど、耳から聞こえてきた呼び出し音に、逃げ出したくなる。
.....やっぱダメだ!ちょっと考えよう///
そう思って、携帯を耳から離したその時、
『もしもし...』
えっ?嘘だろ!?
「....智..?」
『翔くん?』
あなたにそう呼ばばれただけで、鼻の奥がツンとして、俺は言葉が出ない。
『翔くん...今、どこ?』
「あ、まだテレビ局..」
『そっか...』
..........しっかりしろよ!櫻井翔!!
俺は大きく息を吸い込んで、
「今から、そっち行っていい?」
と言った。緊張で、喉が張り付いて、声が裏返った。でも智くんは、それを笑うこともなく、
「いいよ、待ってる...」
と静かに言った。
俺は急いで車に乗り込んだ。
智くんのマンションまでは、あっという間についてしまう。頭の中は、まだぐちゃぐちゃのままで。
どうしたらいいのか、
何から話せばいいのか、
こんな時に上手く立ち回れるスキルを、俺..持ち合わしちゃいないんだ///
そんな状態なのに、信号は恐ろしいほど青が連なり、渋滞している筈の大通りも、不思議なくらいに空いていた。
そして、あっという間に智くんのマンションの地下駐車場に着いた。
車の中で、大きなため息をつきながら、ハンドルに頭をつけた。
10年以上身体を重ねていても、
こんな緊張したことも、ドキドキが、止まらないこともなかった。
これで智くんの顔なんかみたら、俺、どうしていいのか分かんないよぉ///
そのとき。
コンコン...
「わあぁ―――っ///」
助手席のドアをノックする音が。
そこには、車の中を覗き込む智くんが...
慌てて窓を開け
「なんでいるんだよ///」と言うと、
「そろそろ来るかと思って、待ってたんだ..」
そう言いながら、ドアを開けて乗り込んできた。
「なっ、何っ?」
焦る俺に、智くんは、
「ドライブ行こうよ、連れてって♪」
とふんわり笑った。
俺の車は、夜の街に滑り出した。