第12章 同じ空の下で
【智side】
楽屋を出るとき、翔くんと松潤はすごく深刻な顔をしていて。
気になって仕方なかったけど、ニノに促されて二人を残して部屋を出た。
「どうする?」
何気なく聞くと。
「どうするってなによ?家帰って、ゲームするに決まってんでしょ」
なに言っちゃってんの?って感じで返されて。
なんか、ちょっと寂しい。
そんなこと言う資格なんかないけど。
俺がなにも返せずにいると、ニノは困ったように眉を下げて。
それから、仕方なさそうにため息を吐くと、なぜか思いっきり背中を叩いてきた。
「痛って!なにすんだよ!」
「あなたがそんな情けない顔するからでしょ!ほんと、やめてくれる?襲いたくなっちゃうから」
冗談っぽく笑いながら言ったけど、瞳の奥は笑ってなんかなくて。
胸が、痛んだ。
「ごめん…」
「だからさ、謝んなっての」
そのまま、話すこともなくなって。
無言のまま、駐車場まで歩いた。
「あなたの車、あっちでしょ」
つい、いつもの癖でニノの車の側までやってきた俺に、マネの車を指差す。
「あ、そっか」
そう言って、離れようとしたけど、どうしても足が動かなくて…。
「まったくもう…いいよ、送ってってあげるよ」
これ見よがしにでっかいため息を吐いて、でも微笑みながら車に乗せてくれた。
「今日だけだからね?」
「わかってる。ごめんな?」
「いいけど…」
それっきり、また会話が途切れる。
「…松潤のこと、気になってんの?」
漸く口を開いたニノが、いきなり核心を突いてきた。
「まぁ…。上手くいってねーのかなって…」
俺の呟きが聞こえてるだろうに、ニノは何も答えてくれなくて。
「人のことより、自分のこと考えなよ。気持ち、伝えないの?」
いきなり説教された。
「…出来るわけねーだろ…今更…」
「やってもらわなきゃ困る。なんのために、俺、フラれたのよ」
怒ったように言われて。
その時ちょうど、マンションの前に着いた。
「いい?ちゃんと伝えなよ?それで、ちゃんと報告すること」
「ニノ…」
「大丈夫。きっと、上手くいくよ」
泣きそうな顔で、笑ってくれて。
走り去るテールランプを見ながら、暫くその場から動けなかった。
今更だよ。今更、だけど…。
翔くん…俺、伝えてもいいの…?
その時。
ジーンズのポケットに入れてた携帯が、震えた。