第11章 ふたりのカタチ
【雅紀side】
「翔くんじゃないと、だめなんだ…。わかってるけど、離れられない…」
苦し気に顔を歪めた松潤に、掛ける言葉なんてあるはずなかった。
だって、それは俺と全く同じ気持ちだったから。
俺だって、翔ちゃんじゃなきゃダメだった。
今でもまだこんなに好きなんだ…。
「…わかるよ。俺も同じ。離れたくなんかなかったよ。松潤とも付き合ってるって知ってて、それでもみっともなく縋ってたのは、思い続けていれば、いつかは俺だけを見てくれるんじゃないかって、そんな期待を捨てきれなかったからだもん」
俺の言葉に、隣に座っていたニノが息を飲むのがわかった。
思わずそっちを見ると、涙が今にも零れそうにゆらゆらと溜まってて。
ニノも、全く同じ気持ちでリーダーの側にいたんだなって思った。
正面に座る松潤に視線を戻すと、やっぱり同じように涙を堪えてる顔してて。
俺は右手を伸ばしてニノの手を、左手を伸ばして松潤の手を握った。
「でも、ね?翔ちゃんの気持ちは、どうでもいいの?」
そう言うと、松潤は弾かれたように顔を上げた。
その瞳は恐ろしいものを見ているかのように、見開かれていて。
反動でなのか、涙が一粒零れ落ちた。
「松潤はそれでいいかもしれない。でも、翔ちゃんの気持ちは?翔ちゃんが誰のことが本当に好きなのか、もうわかってるよね?その気持ちはどこへ行くの?殺すの?翔ちゃんの心を殺してまで、翔ちゃんを手に入れて、それで本当にいいの?松潤が欲しかったのは、翔ちゃんの脱け殻なの?」
握りしめた松潤の手が、小刻みに震えだす。
「…違う…イヤだ……嫌だよ、別れたくない…」
大きな瞳から、涙が幾つも零れ落ちる。
だけど。
「ねぇ、俺たちが好きだったのはさ、リーダーのことが好きな翔ちゃんなんだよ。リーダーのこと考えて、キラキラ輝いていた翔ちゃん。俺たちがいくら頑張ってもさ、それは手に入らないんだよ。だってそれは、リーダーを好きだって気持ちがないと成り立たない存在なんだから」
くすんだガラスみたいだった松潤の瞳が、段々とクリアになっていく。
まるで、涙が汚れた心を流してくれているみたいに。
「だから、もう手を離してあげよう?そうしてさ、俺たちの大好きだった翔ちゃんを、取り戻そうよ?」
松潤はなにも答えなかったけど。
ぎゅっと手を握り返してくれた。