第11章 ふたりのカタチ
【雅紀side】
解かれた手を、茫然と見て。
翔ちゃんに視線を戻すと、足元を見つめながら、辛そうに、今にも泣き出しそうに顔を歪めていた。
なんで?翔ちゃん…
なんでそんな顔してまで、松潤の側にいるんだよ…
「行こう」
松潤が、翔ちゃんの手首を握って。
強引に引っ張って楽屋を出ていく。
引き摺られるようにしながらも、翔ちゃんは黙ってそれに従って。
二人の姿は消えてしまった。
「…相葉さん…」
ニノが、遠慮がちに背中から声を掛けてくる。
「…なんで?ニノ、なんで?なんで翔ちゃんはまだ松潤と会ってるの?」
振り返って問い質すと、ニノは苦し気に眉を潜めた。
「そんなの…私にだってわかりませんよ…」
「ねぇ、なんで?なんでなんだよ?なんで…俺は何のために翔ちゃんと別れたの!?」
「相葉さん…」
涙が、零れ落ちて。
ニノが、益々苦しそうに顔を歪めたのが、揺れる視界の向こう側に見えた。
こんなの、ニノに当たったって仕方ないのに…
それでも言わずにはいられなかったんだ。
「なんで…翔ちゃん、なんでだよ…?」
わかんないよ…
だってあの時は確かに、リーダーの事が一番大事なんだって、それに気がついた筈でしょ?
もう一度リーダーと向き合おうって、そう決心してくれたんじゃなかったの?
松潤じゃダメなんだって、そんなこととっくに判ってるくせに…!
「…俺、潤くんに言ったんです。翔ちゃんとは、もう会わない方がいいって。もしかしたら、それが逆効果だったのかも。あの人、頭ごなしにダメって言われたら、益々意固地になっちゃうとこあるから…」
責任を感じてるように、ニノが身体の中から絞り出すみたいにそう言って。
俺は、ニノに八つ当たりしたことを酷く後悔した。
そんなの、ニノが責任感じることじゃないのに…。
「相葉さん…俺、もう一度潤くんを説得してみます。潤くんだって、このままで良いなんて思ってない筈なんだ。翔ちゃんが、本当の翔ちゃんじゃなくなってること、とっくに気付いてるだろうし。きっと手放してあげなきゃいけないの判ってて、でも切欠が掴めなくなっててあんな態度になってるんだと思う。…一緒だから…智と付き合ってる時の、俺と…」
ニノの想いが、痛いほど伝わってきて。
「うん。俺も、一緒に行くよ。このままでいい筈ないから」
自然に、そう言ってた。