第11章 ふたりのカタチ
【潤side】
翔くんが、俺の下で可愛い喘ぎ声を上げながら揺れている。
「あ、あ…んっ…潤…もっと、きて……」
俺のこと、突き放さないでくれた。
抱き締めてくれた。
温めてって、そう言ってくれた。
それだけで、十分だよ…
「…もっと、言って?」
せがむと、薄く瞳を開いて俺を見上げてくる。
快楽に彩られた、娼婦のような眼差しで。
他の誰にも、渡したくない。
「名前、もっと呼んで?潤って、呼んでよ…」
ずっと聞いていたいんだ。
大好きなそのぽってりとした唇が、俺の名前を紡ぎ出すのを。
他の誰でもない、俺の名前を。
「…潤…潤…もっと…」
甘えるように俺の首に腕を回して、何度も呼んでくれる。
愛しくてどうしようもなくて。
俺は自分の持ってる愛情全てを彼の中に注ぎ込むように、奥を抉った。
「あっ、あ…潤……もう…イク、よ…」
「ああっ…俺も……一緒にイこ……」
そうして同時に昇り詰めて。
俺は荒い息を整える間もなく、彼の身体を抱き締める。
「翔くん…愛してるよ。ずっと、翔くんだけ…」
彼は、それには答えずに、ただ抱き締め返してくれた。
その後、ベッドに移動して、また抱き合って。
いつものように翔くんが意識を飛ばして。
身体を綺麗にしてやったタオルを洗濯機に入れてこようと立ち上がった時だった。
「…いか、ないで…」
背中に声を掛けられて、振り向いた。
「翔くん?どうした?」
そんなこと言うの初めてだったから、思わず聞いたけど、翔くんは布団に包まれたまま、小さな寝息を立てている。
寝言…?
なんとなく気になって側に戻ると、堅く閉じられた瞳から、幾つも涙が零れていた。
それを拭ってやろうと指を伸ばした。
その時。
「…お願い……行かないで…」
苦しそうに眉を寄せて、切な気に呟く。
「ずっと……愛してたんだ…あなた、だけを……」
涙は、留まることを知らずに、流れ続けて。
ついに、はっきりと彼の心の一番奥底にいる、あの人の名前を紡いだ。
「愛してる……智、くん…」
たった、一言。
だけど、夢の中にいる彼から零れた言葉は、鋭い刃のように俺の心に突き刺さった。
零れ落ちる涙が、見えない刺となってその傷口を抉っていく。
俺は茫然と、真っ赤な鮮血が流れ出した自分の心を、見つめるしかなかった。